357話 最新ステータス ローズ

「ふう。やっぱり、エルカ迷宮から町まではそれなりに距離があるよなあ」


 俺はそう呟く。

 『悠久の風』の戦闘能力は抜群だ。

 その一方で、移動速度ばかりはどうにもし難い。


 脚力が高い俺、リン、ユヅキあたりだけなら、ずっと走るのもありだ。

 だが、ローズやエメラダあたりはそれほど速く走れない。

 それに、加入したばかりのセリアもいる。

 下手に走って移動し、魔物と遭遇した際に息が乱れて対処が遅れたら危険だ。


「せめて、わたくしの魔法で皆様の体力を回復しておきましょう。【リフレッシュ】」


 ローズの魔法により俺たち全員体力が回復する。

 彼女は治療魔法の使い手だ。


 最初級の【ヒール】では、個人の小さい外傷を治療するに止まる。

 次に覚える【エリアヒール】は、効力自体はヒールと同程度。

 しかし、範囲内にいる者の傷をまとめて治療できる。


 【リカバリー】は、毒や麻痺などの状態異常を治す。

 さらに上位の【リフレッシュ】は、各人の体力を回復する。

 ここで、ローズの最新ステータスを見ておこう。



ローズ

種族:人族

称号:エルカ迷宮踏破者

ファーストジョブ:一流貴族レベル28

セカンドジョブ:治療魔導師レベル23

サードジョブ:速弓士レベル21

控えジョブ:貴族レベル30、治療魔法使いレベル30、弓士レベル30、水魔法使いレベル5

HP:B(07/30)

MP:B(23/30)

闘気:C(08/10)

腕力:C(09/10)

脚力:B(05/30)

器用:B(15/30)


アクティブスキル:

『治療魔導師』ヒール、エリアヒール、リカバリー、リフレッシュ

『速弓士』五月雨撃ち、ダブルアローショット、曲射


パッシブスキル:

『一流貴族』気品向上、全ステータス上昇(微)、思考力上昇、パーティメンバー気力上昇(大)、貴族の心得、マナー向上、全ステータス上昇(小)、統率力上昇、貴族の威厳

『治療魔導師』MP強化、詠唱時間短縮、MP強化

『速弓士』器用強化、腕力強化

『エルカ迷宮踏破者』全能力値上昇(小)、閉所耐性上昇



 彼女のファーストジョブは『一流貴族』。

 これは『貴族』のジョブレベルを30まで上げることで転職できるようになる上級ジョブだ。

 戦闘においてはさほど恩恵がない。


 一方で、貴族界で生き抜いていく上で役立つパッシブスキルを多く獲得できる。

 『悠久の風』のおいて、人族の貴族は彼女だけだ。

 俺が今後成り上がっていくことを見据えて、貴族界の常識に詳しいローズのファーストジョブはこれに設定している。


 そして、セカンドジョブは『治療魔導師』。

 戦闘時の傷を癒せるだけでなく、今やってもらったように体力を回復することもできる。


「ありがとう。助かるよ」


 俺はローズに礼を言った。


「いえ。これくらいは当然ですわ。コウタ殿の正妻として、常に支えていきますわ」


 ローズは笑顔でそう答えた。

 パーティとしての活動時は、歴の長いシルヴィやユヅキの方に発言力がある。

 また、料理人のリンや鍛冶師のミナは、専門職としてみんなから一目置かれている存在だ。


 ローズはこの4人に比べると総合的なジョブレベルがやや劣る。

 だが、その身分から俺の婚約者となっている。

 私生活における序列は、ローズが一番上だろう。

 次いで、エルフの有力氏族の娘であるティータかな。


「ローズがいて本当に良かったよ。そろそろ結婚式の準備をしないとな」


「そうですわね。でもまずは、今回の件の報告からでしょう。迷宮討伐者ともなれば、その格は段違い。結婚式の格式や招待客も再考せねばなりません」


「ああ、しっかりと報告しよう」


 俺たち『悠久の風』は、エルカ迷宮を討伐したことにより大幅にジョブレベルが上がった。

 その上、金銀財宝も回収した。

 それだけでも大きな成果だ。


 だが、さらなる成果にも期待できる。

 それは、『悠久の風』の名声と地位の向上だ。

 パーティや各人のランクアップに期待したいところだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る