355話 最新ステータス リン

 ミナの活躍により、クレイジーラビットの群れを撃破した。


「へへっ。ミナっち、ちょっと甘いんじゃねえのか?」


 リンがニヤリと笑う。

 その言葉の意味が一瞬分からなかったが、すぐに理解した。

 少し離れたところから、魔物が押し寄せてくる音が聞こえる。


「うう……。まさか、クレイジーラビットがまだいたとは予想外なのです……」


 ミナがションボリした表情でそう言う。

 自分の活躍で一網打尽にしたと思った魔物の群れが、全体からすると一部に過ぎなかった。

 落ち込むのも仕方ないだろう。


「心配するな。こういうときのためのパーティだろう? ここは俺に……」


 俺がそう言い掛けたときだった。


「いーや、あたいに任せてくれよ」


 リンがニッと笑って前に出てきた。


「任せるって……。どうするつもりなんだ?」


「見てなって。あたいの新技を見せてやる!」


 リンはそう言って、両手を天高く掲げた。

 そして……。


「雷鳴轟け! 【神鳴】!!」


 バリバリッ!!

 ゴロゴロドーン!!


「「ギャウウー!!」」


 激しい落雷が起こり、魔物たちが一斉に感電した。


「す、すごい……」


 シルヴィが唖然としている。

 神鳴。

 別名、雷。

 カミナリを落とす魔法なのだが、スキルの文字が少しオシャレだ。

 MSCでも一部から好評だった。

 もちろん、威力も高い。

 だが、今はそれよりも気になることがあった。


「お、おい。リン。お前にも落ちていなかったか?」


「へへっ。こりゃ、わざとだよ。はああぁっ! 【纏雷】!! そして【聖獣化】!!!」


 ビリビリッ!

 彼女の身体を、電撃が包み込む。

 そうか。

 このスキルがあったか。


「な、何やってるのです!?」


「まあまあ、黙って見ていなって」


 そう言った直後、彼女の姿が消えた。

 否、目に見えないほどの速度で動き出したのだ。

 ズバババッ!

 ザシュッ!!

 目で追えないほど速いスピードで敵に攻撃を加えていく。


「す、すげえ……。これが『雷魔導師』と『聖獣闘士』の合わせ技なのか……!」


「うん……。僕も初めて見たよ……。すごいね……」


 俺とユヅキは驚きっぱなしだ。

 雷魔導師のアクティブスキルの1つ、纏雷。

 文字通り、雷を身に纏う技だ。

 敵に触れたときに感電させる効力があり、攻防一体の技である。


 そして、聖獣闘士のアクティブスキルの1つ、聖獣化。

 これは獣に近い姿になることにより、身体能力を強化する技だ。

 自身の種族以外の獣にもなれるし、純粋な人族である俺が使用しても鍛錬次第で特定の獣に近い姿に変化できる。

 だがもちろん、各人の種族に応じた獣の姿になることの方が簡単だし、身体能力の向上幅も大きい。


 金兎族のリンの場合は、もちろん金色の兎に近い姿になっている。

 元々獣人として兎耳を生やしていた彼女だが、今は獣としての特徴が一回り増しているようなイメージだ。

 その姿のリンがクレイジーラビットの後詰めを殲滅していく。

 ここで、彼女の最新ステータスを見ておこう。



リン

種族:金兎族

称号:テツザン杯ベスト4、エルカ迷宮踏破者

ファーストジョブ:料理名人レベル28

セカンドジョブ:聖獣闘士レベル27

サードジョブ:雷魔導師レベル26

控えジョブ:獣闘士レベル30、料理人レベル30、雷魔法使いレベル30、水魔法使いレベル5

HP:B(01/30)

MP:B(04/30)

闘気:B(05/30)

腕力:C(09/10)

脚力:A(00/100)

器用:B(12/30)


アクティブスキル:

『聖獣闘士』裂空脚、砲撃連拳、獣化、瞬脚、乱れ蹴り、爆撃正拳、聖獣化

『雷魔導師』スパーク、パラライズ、ライトニング、神鳴、纏雷


パッシブスキル:

『料理名人』パーティメンバー腹減り低下(大)、斬耐性強化、肉類ドロップ率上昇、器用強化、料理の心得、熱耐性強化、味覚強化、山菜類探知能力上昇、鉄人

『聖獣闘士』脚力強化、アクティブスキル発動時間短縮

『雷魔導師』MP強化、詠唱時間短縮、MP強化

『テツザン杯ベスト4』闘気上昇(微)、腕力上昇(微)、脚力上昇(微)

『エルカ迷宮踏破者』全能力値上昇(小)、閉所耐性上昇



 リンはミナと同じく、ファーストジョブに生産系ジョブを設定している。

 純粋な戦闘能力ならシルヴィやユヅキに一歩劣る。

 だが、その高い脚力と雷魔法の特性を活かした超速の戦闘は、とても頼りになる。


 まさに今も、クレイジーラビットを次々と狩っている。

 しばらくして、辺りには静寂が訪れた。


「ふう……。終わったぜ」


「お疲れさん」


 俺はリンの肩に手を置いた。

 バチッ!

 纏雷が少し残っていたようで、静電気のような痛みが俺を襲った。

 だが、これぐらいは男として我慢せねば。


「いやいや、大したことねえって。まだまだ慣れてねえからな」


「そうなのか? かなり強くなっているように見えたけど」


「へへっ。まあな。迷宮でも、あたいがもう少し強ければもっと楽に出られたかもしれねえと感じてたんだよ。だから、コウタっちのために頑張ろうって思ってさ」


「そうだったのか……」


「あたいはもっと強くなる。それに、料理の腕も上げてもっとうまいモンを食わせてやる。これからもよろしく頼むぜ」


 リンが俺に向かって手を差し出してきた。

 俺はその手をしっかりと握った。


「ああ。こちらこそ、頼りにしてるよ」


「へへっ」


 リンが嬉しそうな顔になる。

 男勝りだが、料理上手で戦闘もこなすリン。

 彼女の今後にもますます期待できそうだ。

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