347話 セリアが『悠久の風』に加入

「はあぁ……。素晴らしい時間でしたね」


「うん……。僕、しばらく立てそうにないよ」


 シルヴィとユヅキが恍惚とした表情で言った。

 他の仲間たちも似たようなものだ。

 俺はそんな仲間たちを尻目に、一人の女性に話し掛ける。


「セリア、ちょっといいか?」


「ふにゃ~」


 俺の言葉が聞こえているのかいないのか、セリアは幸せそうな顔をしながら猫のような声を出した。

 とある事項の検証のために彼女と話したいのだが、これは難航しそうだ。


「なあ、セリア」


「にゃあぁ……」


 ダメだ。

 完全にトリップしている。

 仕方がない。

 俺は彼女の耳元に口を近づけ、囁くようにして言う。


「セリア……愛してるぞ」


「ひゃんっ!?」


 彼女はビクンッと身体を震わせ、一瞬にして正気を取り戻した。


「ど、どうしたんですかにゃ? コウタさん」


「実は頼みたいことがあるんだけど……」


「にゃんですかにゃ?」


 セリアの問いに、俺は答えない。

 代わりに、ステータス画面で『パーティメンバー設定』を操作し、彼女にパーティ加入の打診を行った。


「えっ!?」


 俺の意図を理解したらしいセリアが驚きの声を上げる。


「これはどういうことですかにゃ? 脳内に直接……? 私が『悠久の風』に……?」


「ああ。受けてくれないか?」


 この世界において、『パーティメンバー設定』というスキルは一般的ではない。

 シルヴィやユヅキにパーティ加入を打診した際にも、困惑した様子だった。

 だが、これを受け入れてくれれば、何かとメリットは大きい。

 俺にとっても、セリアにとってもな。


「ですが、私は冒険者ギルドの職員ですにゃ。自分自身が冒険者になるにゃんて……」


「セリアには素質がある。冒険者として大成して、栄光を掴む未来が見えるぞ。事務仕事をバカにするわけではないが、稼ぎや名声は一流冒険者の方が上だ」


「うぅ……。それはそうですけどにゃ……。さすがにBランクパーティ『悠久の風』に入ってやっていけるわけがにゃいにゃ……」


「大丈夫だ。繰り返すが、セリアには素質がある。俺たちでサポートするし、万が一うまくいかずに断念したら、十分な退職金を払おうではないか。もしくは、俺のハーレムの一員として家庭を守ってくれてもいいぞ」


 俺は彼女の目を見て、力強くそう説得する。


「にゃあぁ……。分かりましたにゃ。そこまで言われたら断れませんにゃ」


「ありがとう。では、パーティ加入を了承してもらえるか?」


「わかったですにゃ」


 セリアが脳内で『悠久の風』への加入を了承したようだ。

 俺のステータス画面で、彼女のステータスが表示されるようになった。

 これで、『悠久の風』は10人。

 俺、シルヴィ、ユヅキ、ミナ、リン。

 ティータ、ローズ、グレイス、エメラダ、セリアだ。

 ずいぶん大所帯となった。


(ふむふむ……。セリアの現状ステータスはこんな感じか……)


 俺は彼女のステータスに目を通す。

 既にチートの恩恵を受けまくっている俺たちには遠く及ばないが、それでも悪くはないステータスだ。


(ふふふ。この状態から、検証をしてみるとするか)


 俺はそんなことを考えながら、ミッションの報酬を受け取るために画面を操作し始めたのだった。

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