317話 翌朝

「ふぁああ……。よく寝たな……」


 俺は伸びをする。


「おはようございます、ご主人様」


「お目覚めですか? 主様。ぐっすり眠っておられましたね」


「コウタっち、おっすー!!」


「みんな、早いんだな」


 すでに『悠久の風』のメンバーは目を覚まして活動していた。


「コウタが遅いんだよ。僕たちは、昨日早々にダウンさせられた分、たっぷり寝たからね」


「その通りなのです。聞けば、ボクたちの後にまたティータさんやローズさんと楽しんだのです?」


「ああ、その通りだが?」


 ミナの問いに、俺は平然と答える。


「あたいたちと楽しんでおいて、まだ足りないっていうのかよ」


「さすがはご主人様です!」


 リンやシルヴィが感心したように言う。


「……コウタ殿の精力は底なしですわね。わたくしは治療魔法を自分に掛けながら粘りましたが、やはり先にダウンしてしまいましたわ……」


「でも、さすがのコウタ親分でも、ローズの姉御の粘りには手を焼いたみたいだったぜ。俺の順番が回ってこなかったから、昨晩はずっと悶々としてたんだ」


 グレイスがションボリとしてそう言う。


「悪かったな。グレイス、それにエメラダ。今夜こそは2人の相手をしてやるぞ」


「……えっと。迷宮の中ですし、無理にとは言いませんよ? 主様の気の赴くまま、どうぞ」


「遠慮するなって。大丈夫だ。こんな魅力的な2人の相手をできなかったことは、痛恨の極みだと思っていたんだ。楽しみにしてろ。ま、その前にまずは迷宮の探索を進めなければならないが」


 俺は『悠久の風』のリーダーとして仲間たちを鼓舞した。

 夜のお楽しみも結構だが、ちゃんと進まないとマズイ。


 状況を再整理しておこう。

 俺たちの戦闘能力は抜群なので、魔物の襲撃は特に問題ない。

 ティータに『結界魔法使い』のジョブを取得してもらったので、夜の睡眠の質も高まった。

 戦闘時の多少のケガは、『治療魔法使い』のローズによって治してもらうことができる。

 『調合士』エメラダが作成した各種ポーション類があれば、状態異常への対処も可能だ。

 俺の『ストレージ』には大量の物資を入れているので、当面の食事や飲料水も問題ない。

 だが、さすがに9人で補給も無しに浪費していては、そのうち底をつくだろう。

 物資がなくなる前に、地上に戻らなければならない。


「……コウタちゃん? ティータに何か言うことはない……?」


 ティータがジト目で俺を見る。

 先ほども言った通り、彼女は『結界魔法使い』のジョブを取得した。

 昨夜は途中から結界を維持し、『悠久の風』の安眠に一役買ってくれた。


「いやすまん。ティータの結界魔法のおかげで、ぐっすり眠れたぞ」


「……そうでしょ? 感謝するといいよ……」


「はいはい。ありがとな」


 俺はティータの頭を撫でてやった。


「……ちょっと、子ども扱いしないで。 これでも立派なレディなのに……」


「悪い悪い。つい、いつもの癖で」


「……まったくもう……。コウタちゃんは本当に仕方がない人だね……」


 ティータは少しむくれつつも、幸せそうな顔をして俺の腕に自分の腕を絡ませてきたのだった。

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