301話 4階層突破

 2週間が経過した。

 俺たち『悠久の風』は、エルカ迷宮の探索を進めている。


「いくぞ! 【アクセル】からの……【エクスカリオン】!!」


「グルルアアァッーーー!!!」


 俺の奥義を受け、魔物が息絶える。

 そして光の粒子となり霧散した。

 これにて討伐完了だ。


「ご主人様、さすがです!」


「やっぱりコウタはいいところを持ってくね」


 シルヴィとユヅキがそう声を掛けてくる。


「トドメが俺になったのはたまたまさ。みんなの力があってこそ、この4階層のボスも倒せたんだ」


 2階層ボスのブラックタイガーを討伐したのが2週間前。

 それから3階層の探索、3階層のボス、4階層の探索と進めてきた。

 4階層のボスを討伐したのがたった今というわけだ。


「順調なのです。エメラダさんを始めみんなのジョブレベルも上がってきたのです」


「へへっ。それに、魔石やドロップ品の収入も悪くねえよな」


「コウタ殿のおかげですわね」


 ミナ、リン、ローズがそう言う。

 俺は様々なシステムスキルを持つ。

 『ジョブ設定』と『パーティメンバー経験値ブースト』により、俺の仲間たちは所有ジョブを自由に設定できるし、その成長も早い。

 さらには『魔石蓄積ブースト』と『レアドロップ率上昇』により、普通に狩りをしているだけでも収入が安定して高くなる。


 通常、迷宮の攻略は日々の狩りには向かない。

 魔石やドロップ品による収入はあるが、それは迷宮の外にいる魔物でも同じである。

 違いがあるとすれば宝箱の有無だ。

 宝箱の期待値分、ダンジョン外の狩りよりは旨味がある。


 ただし、迷宮は街から離れたところにあることが多いため、移動に不便だ。

 移動時間がかさむ分だけ時間あたりの効率が落ちるし、ケガをした際に撤退して治療することにも支障が出る。

 そのため、本格的に最奥まで攻略するような者を除けば、わざわざ迷宮にこもる冒険者はさほど多くない。

 あまり放置し過ぎると魔物があふれる『スタンピード』が起こるリスクがあるので、そのあたりは冒険者ギルドや領主が定期的に調査して、臨時の報奨金を設定することもあるらしいが……。


「そろそろ5階層に行くか」


 俺はみんなに告げた。

 1階層ごとに、出現する魔物の強さは上がるが、5階層まではそこまで強い魔物はいない。

 MSCではそうだった。

 みんなのジョブレベルも上がっているし、今の俺たちで問題なく進めるだろう。


「……ん。賛成……」


「ガンガン行こうぜ!」


「……えっと。あたしも頑張りますね」


 ティータ、グレイス、エメラダがそう言う。

 他の者たちからも反対意見はない。

 5階層に足を踏み入れることにしよう。

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