300話 豪華ディナー

 夕食の時間だ。

 料亭ハーゼの個室を貸し切っている。


「うわぁ……」


「これは……」


「……すごい……」


 ユヅキ、シルヴィ、ティータが目を丸くする。


「ごちそうなのです!」


「おおおぉっ!!」


「……」


 ミナ、グレイス、エメラダもよだれを垂らしている。

 目の前に広がる光景を見て、俺は絶句していた。


 食卓の上には所狭しと料理が並んでいる。

 色とりどりの野菜を使ったサラダ。

 香ばしく焼き上げられたチキンソテー。

 新鮮な魚介類を使ったアクアパッツァ。

 そしてメインディッシュとして、ブラックタイガーの肉を使用したステーキだ。

 他にも副菜として、煮込みハンバーグ、グラタン、ピザ、ポテトフライなどがテーブルを埋め尽くさんばかりに置かれている。


「……さすがに作りすぎじゃないか? リン」


「へへっ。ちょっと張り切りすぎたかな。でも、足りないよりはいいだろ?」


 リンが料理をしてくれたのだが、気合が入りすぎてこんなことになってしまったらしい。


「そうだな。みんなよく食べるし、多めに用意しておく方がいいか」


 ジョブレベルが高くなった俺たちは、とにかくよく食べる。

 万が一料理が足りなくなれば、シルヴィやミナあたりがションボリしてしまうだろう。


「私もがんばりましたよぉ」


 ルンが言う。

 彼女はリンの従姉妹だ。

 リンよりも年下であり、料理の腕は若干劣る。

 せっかくの高級食材ということで、リンは彼女に教えながら一緒に料理したのだ。


 リンの料理の腕は疑う余地がないが、ルンの腕前も相当なものだ。

 そんな二人が作った料理である。

 楽しみで仕方がなかった。


「では、みんなで食べるとするか」


「「「「「いただきます」」」」」


 みんなで声を合わせて挨拶をし、それぞれ食べ始める。


「んん~!! おいしいのですよぉ!!」


「うめぇぜ!」


「いい味です!」


 ミナ、グレイス、シルヴィが肉にがっつく。


「……うん。おいし……」


「これは素晴らしい味ですわね」


「んぐんぐ……。んまい」


「……おいしいです」


 ティータ、ローズ、ユヅキ、エメラダ。

 それぞれが口々に感想を言う。


「良かったですぅ……。皆さんが喜んでくれてぇ」


 ルンがホッとしたように呟いた。

 これだけの量をつくり、マズいと不評だったら大変だもんな。


「本当にうまい。リン、そしてルンちゃん。ありがとう」


「いや、あたいの方こそありがとうだよ。ブラックタイガーの料理をルンに伝授できたし、それにみんなの笑顔が見られて幸せだ」


「そうですねぇ。料理人冥利に尽きますぅ」


 2人は嬉しそうな表情をしている。

 そうして、俺たちは素晴らしい料理を堪能したのだった。

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