299話 お前はもう俺のたちの仲間だ

 俺たち『悠久の風』は、エルカ迷宮からエルカの町へ歩みを進めていく。

 みんな優秀なパーティメンバーだ。

 俺も負けていられない。


「……最も規格外なのが主様だと思いますが……」


「ん? 何か言ったか?」


「何でもありません」


 何やら呟いていたような気がするが、まあいいか……。


「それより、エメラダも肉類は嫌いではないよな?」


 穀物はいい。

 ご飯やパンをお腹いっぱい食べることには幸せを感じる。

 食後の甘いデザートは格別だ。


 油っぽい食べ物も悪くない。

 唐揚げやフライドポテトなどは大好物だ。


 だが、俺がもっとも好きなのは肉類だ。

 シルヴィやミナあたりも食べ物の好みは俺と似ている。


「……えっと、はい。ホーンラビットの肉などはたまに食べていました」


「そうか。今日の晩ご飯が楽しみだな。リンの料理の腕は確かだし、期待してくれていいぞ!」


「……? ああ、皆様の余り物を食べさせていただけるということですね。奴隷のあたしには過分なことですが、ありがたくいただきましょう」


 ……うむ。

 エメラダはどうやら誤解をしているようだ。

 普段から食事を共にしているのだが、さすがに高級食材までの取り分はないと。

 俺がそんなケチくさいことをするわけがないだろう。

 俺は苦笑しつつ訂正する。


「違うって。もちろんエメラダの分もばっちり用意するさ」


 ドロップしたブラックタイガーの肉は十分な量がある。

 10キログラムぐらいだろうか。

 俺、シルヴィ、ユヅキ。

 ミナ、リン、ティータ、ローズ。

 グレイス、エメラダ。

 9人で食べても余裕があるだろう。


 ジョブレベルが高くなった俺たちは大食漢になりつつある。

 しかしさすがに1人あたり1キログラムもあれば足りる。

 純粋に肉だけを食べるならひょっとするかもしれないが、前菜やスープも用意してくれるだろうし。


「…………!?」


 エメラダが驚愕に目を見開く。


「おーい、みんな。エメラダも一緒に食べるのでいいよな?」


「何を当たり前のことを言っているのです?」


「……食事はみんなでとった方がおいしい……」


 ミナとティータがそう答える。


「コウタ殿のおっしゃることです。異存はないですわ」


「ご主人様のご意向通りに!」


「おう! 今日は楽しまないとな!」


 ローズ、シルヴィ、リンが続けて答えた。


「……」


「エメラダ、お前はもう俺のたちの仲間だ。遠慮なんかしないでくれ。これからもよろしく頼むぞ」


「あ、ありがとうございます! こちらこそ、よろしくお願いします! 主様! それに皆様!」


 エメラダは嬉し涙を浮かべながら深々と頭を下げた。

 こうして俺たちは、夕食に思いを馳せつつエルカ迷宮からの帰路についたのであった。

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