294話 エルカ迷宮 2階層

 エルカ迷宮の2階層を探索中だ。

 かつてそれなりに苦戦して狩っていたリトルブラックタイガーだが、今の俺たちの敵ではない。

 順調に奥へと進んでいく。


「うーん……。ちょっと物足りない気もしますわね」


「……そうだね。迷宮はもっと過酷な場所のはずだけど、コウタちゃんがいるから何の苦労もない……」


 ローズとティータが呟く。


「うむ。寄り道せずに、2階層のボスに挑戦するか」


 俺は仲間たちに告げる。


「いいぜ! あたいも退屈に思っていたんだ!」


「わたしはご主人さまに全て従います!」


 リンとシルヴィが答える。


「ボクもそれで構わないのです」


「同じく。油断は禁物だけど、慎重になり過ぎるのも良くないからね」


 ミナとユヅキも同意してくれた。


「決まりだな。では、奥に向かおう」


 そう言って、俺たちは歩みを進める。

 道中の敵を難なく撃破し、ついに2階層の奥まで辿り着いた。


「ここがボス部屋ですの?」


 ローズが尋ねる。


「ああ。そうみたいだ。さすがに少し緊張するな」


「ふふ。コウタ殿がそういうことを言うのは初めて見ましたわ」


「まあ、確かにそうだが……」


 俺は苦笑しつつ答えた。

 MSCに酷似したこの世界で、俺は当初からある程度の自信を持って活動してきた。

 シルヴィを思い切って分割払いで購入したり、当時としてはやや危険なエルカ樹海での狩りに挑戦したりなどだ。

 とはいえ、まだまだ駆け出しという自覚はあったし、時には慎重に行動することもあった。


 その後、ミナとリンを仲間に加え、パーティの戦力は増した。

 テツザン杯では優勝もできたし、ブラックワイバーンも撃破した。

 俺の戦闘能力は周囲と隔絶しつつあった。

 ローズと本格的に交流を持ったのはその頃だ。

 彼女から見た俺は、常に自信満々で余裕のあるリーダーとして映っているだろう。


「ご主人様なら2階層程度、何の問題もありません!」


「へへっ。ガンガン行こうぜ!」


 シルヴィとリンは、イケイケドンドンなタイプだ。

 こういった場面で臆することはほとんどない。


「ああ、そうだな」


 俺たちはボス部屋の扉を開く。

 すると、そこには巨大な魔法陣があった。


「ふむ……。この魔法陣は……」


 1階層で見たものより、ひと回り複雑な紋様になっている。


「これは……。なかなかの魔物が出てきそうですわね」


「えっ!? それって大丈夫なのですか?」


 ローズの言葉に、エメラダが驚く。


「大丈夫だ。この魔法陣には見覚えがある。ブラックタイガーが出るだけだ。リトルブラックタイガーの上位種だな」


 俺はみんなに説明をする。

 多少は強いが、極端な強敵というわけでもない。

 さくっと倒してしまうことにしよう。

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