282話 エメラダが『悠久の風』に加入
冒険者ギルドにてエメラダを『悠久の風』に加入させる処理をしているところだ。
「ところで、エメラダは半ば違法行為で奴隷にされてしまったのだが。冒険者ギルドはそれに関知しないのか?」
「介入はできないのですにゃ。人さらいのように明確な違法行為があれば冒険者ギルドや騎士団も動きやすいのですが、『毒蛇団』の連中はずる賢いですから、証拠を残していないですにゃ」
「なるほど」
「今回のようなケースでも、奴隷商が罪に問えるかは相当微妙なところですにゃ。おそらく『毒蛇団』と繋がりがあるはずですが、確たる証拠がない以上、冒険者ギルドは動けないのですにゃ」
「まあ、それも仕方ないか」
「奴隷商を罪に問えない以上、そこから奴隷を購入されたコウタさんの罪を問えないことも当然の結論ですにゃ。そして、奴隷の所有権もコウタさんにあるのですにゃ」
あれだな。
日本でも、似たような法律があったような気がする。
さすがに奴隷ではなくて、盗品に関する規定だが。
盗人が盗品を無関係の第三者に売り払ってしまった後、その盗人が捕まった。
被害者としては、当然盗まれた物を返してほしいと主張する。
だがここで困るのが、盗品と知らずに物を買い取ってしまった第三者だ。
代金を払って物の受け取りも済ませた後に、「これは実は盗品だったのです。本来の持ち主に返してください」と言われても困ることが多い。
そういった第三者は法的に保護されるべきだろう。
もちろん、売った方と買った方がグルになっていた場合は話は別だが。
今回の場合だと、『毒蛇団』と俺はもちろんグルではない。
エメラダの所有権を放棄せよと言われることはないわけだ。
「それにそもそも、『毒蛇団』の連中の行為にも最低限の正当性があるのですにゃ」
「ふむ? それはつまり、エメラダの借金の取り立てとして奴隷に堕としたのだから、犯罪には当たらないということか?」
「はいですにゃ。『毒蛇団』は、違法スレスレの高金利でお金を貸し付けていたことで有名ですにゃ。今回も、借りたものを返すように催促しただけとも言えるのですにゃ。エメラダさんには、ギルドからも相談や協力を申し出ていましたのににゃ」
「……えっと。すみませんでした。自分で何とかしないとって……」
エメラダがうつむいて、謝罪の言葉を口にする。
「まあ、今回はコウタさんの善意で助けられたということですにゃ。ただ、今後は気を付けるですにゃ」
「はい……ごめんなさい」
「『毒蛇団』の連中はしつこいので有名ですにゃ。しばらくは活動を控えめにするとは思いますが、油断したころにまた出てくるかもしれませんにゃ。今後も何かあったら、遠慮なくギルドに相談に来てくださいにゃ。そして、ギルド主導の殲滅作戦の際には、ぜひコウタさんにも助力いただきたいのですにゃ」
「ああ。わかったよ。俺たちとしても、後顧の憂いは断ちたいところだし」
「よろしくお願いしますにゃ」
冒険者ギルド側との情報共有を終える。
その後、セリアによってエメラダの加入処理が進められた。
こうして俺は、『調合士』で奴隷のエメラダを仲間に加えたのだった。
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