281話 冒険者ギルドで事情を説明

 翌日。

 エメラダを連れて冒険者ギルドに行くと、受付嬢のセリアが出迎えてくれた。


「コ、コウタさん……。そちらの女性はエメラダさんですにゃ……?」


「もちろんそうだ。セリアも顔なじみだからわかると思うが……」


「はいですにゃ。しかし、彼女は例の組織に……。いえ、ええと……」


 セリアが言いにくそうに口ごもる。


「例の組織? ああ、毒蛇d……」


「わわっ! ちょっと待つですにゃ!」


「むぐっ」


 セリアに口を塞がれてしまった。


「ここではまずいですから、こっちに来てくださいですにゃ」


 そう言って、奥の部屋へと案内された。

 俺たちは大人しくついていく。


「それで、どういうことですかにゃ?」


「うーん。昨日の出来事を説明しようか」


「はいですにゃ」


「わかった。実は……」


 俺は事情を説明した。

 エメラダを買った経緯と、毒蛇団とやり合ったことを。


「なるほど、そういうことでしたかにゃ。しかしそれにしても、毒蛇団に手を出すとはですにゃ。コウタさんは、相変わらず無茶をしますにゃ」


「いやあ、ははは。まあ、成り行きというか……」


「笑い事ではありませんにゃ。まったくもう。『毒蛇団』は危険な組織なのですにゃ。Cランクパーティが複数組がかりで挑んでも、壊滅させられたという話もありますにゃ。いくら『悠久の風』がBランクパーティとはいえ、相手が悪いのですにゃ」


「そうなのか?」


 Bランクといえば一流の冒険者のはずなのだが。


「はいですにゃ。彼らの頭目である『毒霧』のアルヴィンは、Aランクに近い実力があるという噂もあるですにゃ」


「へえ。そうなんだ」


 Aランクというのは、この世界では英雄の領域だ。

 Bランクでも十分に達人の領域ではあるのだが、さらにそこから上となるとその数は極端に少なくなる。

 それこそ、Aランクともなれば国家規模でも数人しかいないらしい。

 そんな実力者が裏社会にいるなんて、怖い話である。


「今回の件は、こちらの不注意でもありましたにゃ。申し訳ないですにゃ。ギルドとしても毒蛇団の殲滅作戦は立てているところですが、まだ十分な戦力が整っていなかったのですにゃ」


「ま、俺としても助けるメリットがあったわけだし、別に謝られるようなことはないさ。むしろ、これからエメラダにしっかり働いてもらって、『悠久の風』の戦力アップを図っていきたいと思っている」


「そう言っていただけると助かるですにゃ。それで、今日はその話をするために来たのですかにゃ?」


「ああ。エメラダがうちのパーティーに加わることになったから、手続きをしてもらおうと思ってな」


「なるほどですにゃ。奴隷として購入された以上は、確かにその権利はあるですにゃ」


 高い金を出しておいて、あっさりと解放するお人好しなどそうはいない。

 俺もそうだ。

 魅力的なハーレムメンバーとして、そして世界滅亡の危機に立ち向かう仲間としても、彼女を手放す選択肢はない。


 シルヴィと同じくらいまで俺と親密になれば、解放してもずっと一緒にいてくれるだろうが……。

 シルヴィはともかく、エメラダの解放は時期尚早である。

 このまま『悠久の風』に加入する処理をしてもらうことにしよう。

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