258話 リンの従姉妹ルン

 『悠久の風』の8人で料亭ハーゼへとやって来た。

 それぞれが思い思いの料理を注文し、待っているところだ。


「お待たせしましたぁ」


 しばらくして女性店員が料理を持ってくる。

 次々と並べられていく皿。


「おー……。美味そうだな!」


「これはなかなかですわね」


「……じゅるり……」


 グレイス、ローズ、ティータは待ちきれないようだ。


「ごゆっくりお召し上がりくださいませぇ」


 店員がそう言って去っていく。


「よし、じゃあ食べようか」


 俺たちは食事を始める。

 シルヴィが大口を開けて肉を食らう。


「ん~! 美味しいですね。ご主人様」


「ああ。うまいな」


 俺も答える。


「このお酒もなかなかいけるのです」


「うん。飲みやすいよね」


 ミナとユヅキは酒を飲んでいるらしい。


「ふぅ……」


 ローズはワインを飲みながら、優雅に食事を楽しんでいた。


「ローズ、こっちもどうだ?」


 俺は彼女にチーズを勧める。


「あら? よろしいんですの? いただきますわ」


 彼女はそれを口に運ぶ。


「どうだ?」


「ええ。とてもおいしいですわね」


「そりゃ良かった」


 俺はそう言い、自分も食事を再開する。

 しばらくすると、女性店員がやってくる。

 そして、次の料理を置いていった。


「お、きたな」


「……いっぱい来たのです」


「楽しみだね」


 ミナとユヅキは、料理が来るたびに喜んで食べる。

 肉料理、魚料理、サラダ、スープと次々に運ばれてくる。


「ふう。食べ過ぎたぜ」


「僕もだよ。お腹パンパンだ」


「ボクもなのです」


「もう食べられません!」


「……ちょっとだけ苦しいかも……」


 リン、ユヅキ、ミナ、シルヴィ、ティータ。

 それにローズやグレイスも、みんな満足そうな表情だ。

 結局、ほとんどの料理を平らげてしまった。


「さすがに食いすぎたな」


「おう。満腹で動けねえよ」


 グレイスは苦しそうに言った。


「へへっ。ここまで腕を上げているとはな。ルンの奴、やるじゃねぇか」


 リンが上機嫌にそう言う。


「ルン? あの店員さんですか?」


 シルヴィが聞いた。


「ああ。言ってなかったか? あいつはあたいの従姉妹なんだぜ」


 リンはそう言った。


「ええ!? そうだったのですか?」


「そうだぜ。『悠久の風』に入る前に、少しの間手伝って貰ったんだ。それで、今はこの店を任せてるってわけだ」


「なるほど……」


 シルヴィは納得したようにうなずいている。


「まあ、料理の腕は確かだし、何より接客態度が良いからな。繁盛してるみたいで嬉しいぜ」


 リンは嬉しそうに言う。

 あの店員がリンの従姉妹だったとはな。

 少し似ているかと思ってたが、まさか親戚だとは思わなかった。


「ルンちゃんに任せておけば、安心できそうだな。


 性格はリンと異なるが、料理の腕はなかなかだ。

 これなら、リンには引き続き『悠久の風』のメンバーとして活動してもらえそうだ。


「さあ、そろそろ帰るか」


 俺はみんなに言った。


「そうですわね。あまり遅くなってもいけませんし……」


 ローズはそう答えた。

 俺たちは会計を済ませ、料亭ハーゼを出る。


「今日はありがとうございましたぁ」


 ルンが笑顔で見送ってくれる。


「また来るぜ。今度は新しい料理を教えてやるよ」


 リンがそう言う。

 新しい料理とは、テツザンやアルフヘイムで作った料理のことだろう。


「はい。楽しみにしていますねぇ」


 ルンは嬉しそうに返事をする。

 こうして、『悠久の風』は料亭を後にしたのだった。

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