257話 料亭ハーゼへ

 宿屋の一室で休憩しているところだ。


「さて。一服したら、食事だな。料亭ハーゼに行こうか」


「おう! 楽しみにしてな」


 リンが笑顔で言う。


「ボクはお腹ペコペコなのです。肉を食べたいのです」


「俺もだ。早く食べにいこう」


 ミナとグレイスが言った。

 少しして俺たちは宿屋を出て、料亭ハーゼへと向かう。


「ここだ」


 リンは店の戸を開ける。


「いらっしゃいませぇ」


 店員の女性が声をかけてきた。


「よう、ちゃんとやってるみたいだな」


「あっ。店長、お戻りになられたのですねぇ」


 料亭ハーゼはリンの店だ。

 彼女が『悠久の風』に加入して町を離れるにあたり、人を雇って経営を任せていた。

 もちろん丸投げではなく、一定期間の研修も行っていたそうだ。


「ああ。それで、調子はどうだ?」


「えへへ。おかげさまで繁盛してますよぉ。今日のピークは過ぎましたけどぉ」


 リンの問いに対し、女性店員は嬉しそうに言う。

 確かに、今の時間は夕食にはやや遅い。

 その割には、チラホラと客が入っているので、それなりぬ繁盛していると言っていいだろう。


「それは良かった。じゃあ、あたいらは個室を使わせて貰うぜ」


「はいぃ。どうぞぉ」


 リンが俺たちを連れて店の奥へと進む。

 個室に入った俺たちは席に着く。


「さあ、好きなもん頼んでくれ! ここはあたいの奢りだ。あいつの料理の腕も上がってると思うからよ。期待してくれて良いぜ」


 リンはメニュー表を開いてテーブルに置く。

 『悠久の風』の稼ぎは、半分ほどをパーティの共有活動資金として運用している。

 残りの半分を、パーティメンバーでほぼ均等に配分している。

 普段の食費はパーティ資金から出すのだが、何かの祝いの席などでは例外もある。

 料亭ハーゼでの食事は、リンが奢ってくれるそうだ。


「ありがとうございます! では、遠慮なく……。これとこれを頼みましょう!」


「ボクも賛成なのです」


 シルヴィが指差したのは、両方とも肉料理だった。

 ミナがそれに同意する。


「僕はサラダも食べたいかな」


「……ティータもそうするよ……」


 ユヅキとティータは、野菜をふんだんに使ったサラダを注文した。


「わたくしはこれでお願いしますわ」


 ローズは魚を中心としたコースを頼む。


「おいおい……。そんなにたくさん、食べられるのかよ? なあ? コウタ親分」


 グレイスは俺を見て言った。


「まあ、残っても明日に持ち越せばいいだけだしな。問題ないだろう」


 俺はそう答える。

 そして、女性店員を呼び注文を済ませたのだった。

 どれほどおいしい料理がくるか、楽しみなところだ。

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