255話 エルカの町に帰還

 数日が経過した。

 俺たち『悠久の風』は馬車に揺られていく。


「おっ。エルカの町が見えてきたな。懐かしい光景だ」


 俺はそう呟く。

 改めて見ると、なかなかに発展した町である。

 武の聖地テツザンや、エルフの隠れ里アルフヘイムあたりと比べても発展具合では上だろう。

 アイゼンシュタイン家の領地の中でも、比較的栄えた町と言っていい。


「そうだね。この町も久しぶりだよ」


 俺の言葉に、ユヅキが反応した。

 彼女はDランクパーティ『大地の轟き』の一員として、この町を拠点に活動していた時期がある。


「ボクの鍛冶屋がちゃんと動いているか心配なのです」


「あたいもだぜ。信用できる奴に任せてあるから、大丈夫だとは思うけどよ」


 ミナとリンが言う。

 この2人は、それぞれ鍛冶屋と料理屋を営んでいた。

 今は、後継者を雇って店を任せている形である。


 俺たちはそわそわしながら町の様子を眺める。

 やがて門が見えてきた。


「身分証を提示してください」


 衛兵に声をかけられる。

 俺は懐からギルドカードを取り出した。


「おおっ! Bランクパーティ『悠久の風』の方々でしたか。これは失礼しました。どうぞお通りください。ようこそ、エルカの町へ!」


 笑顔で迎えてくれる衛兵。

 やはり冒険者ランクは上げておくに限るな。

 Eランクは駆け出し。

 Dランクは中堅下位で、ゴブリンの群れなどを相手取る際に一戦力として期待できる。

 Cランクは中堅上位で、ゴブリンの群れなどを相手取る際に核となる戦力になる。


 そして、Bランク冒険者は上級だ。

 単独でオークやオーガの相手を任されることがある。

 また、竜種との戦いに駆り出されることもある。

 俺たち『悠久の風』がテツザンで倒したブラックワイバーンも竜種に分類される。


 まあ、あいつは竜種の中ではやや弱い部類だけどな。

 MSCでは、まだまだ強い魔物がたくさんいた。

 この世界でも、いずれ戦うことになるだろう。

 そんな予感がある。


「さっそく宿に向かうことに致しましょう」


「……そうだね。ティータも少し疲れた……」


 ローズとティータが言う。


「俺はお腹が空いたな。コウタ親分はどうだ?」


「そうだな。確かに食事時だ」


 グレイスの言葉を受け、俺はそう答える。


「よっしゃ! 宿屋を確保したら、あたいの料亭ハーゼで飯にしようぜ! ちゃんと店を守れているか、気になるしよ」


「いいですね! いっぱい食べますよ!!」


 リンの提案に、シルヴィが元気よく返事をする。

 みんながそれに頷く。

 そんな会話をしつつ、俺たちは久々にエルカの町へ足を踏み入れたのだった。

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