188話 神聖な湖で水浴び

 エルフの森の奥地にまでやって来た。

 今は、『悠久の風』の面々で徒歩にて移動中である。


「うおっ! スゲーッ!!」


 目の前に現れたのは広大な湖だ。

 かなり深いようで、底の方は暗くてよく見えない。

 水面が太陽の光を浴びてきらきら輝いている様はとても美しく幻想的だ。


「綺麗な水なのですー」


「こりゃあ、魚が釣れそうだな」


 ミナとリンは大はしゃぎしている。


「……この湖は神聖なもの。湖の水だけでも、人族の町ではそれなりに高く売れる……」


 ティータがつぶやく。

 さすがはエルフの森といったところか。

 ただの湖水にも希少性があるらしい。


「…………」


 そして、なぜか黙っているのはユヅキだ。

 彼女は何やら難しい顔をして考え事をしていた。


「どうかしたか? ユヅキ」


「え!? いや、なんでもないよ……」


 そう言いつつも、どこか上の空である。

 何か気になることでもあるのだろうか。


「ふむ。ちょっと休憩するか」


「そうですわね。ずっと歩きっぱなしですもの」


 俺の提案にローズが同意してくれる。

 実際、結構な距離を歩いてきた。

 疲れが溜まっている者もいるだろうし、ここで一度休憩を取るべきだ。


 湖の近くにちょうどいい木陰もあるし、ここを拠点にしよう。

 俺はストレージからテーブルと椅子を取り出して、休憩の準備を整えていく。

 その間にもユヅキはしきりに湖を見ていた


「どうしたんだ、本当に?」


「ああ、その……」


 ユヅキが口を開こうとするが……。


「へへっ。この湖は本当にきれいだな。いくぜっ!」


「ガッテンなのです!」


 リンとミナが先走って、水浴びを始めてしまう。

 ユヅキが何やら意味深なことを言おうとしていたのに、邪魔するんじゃない。


「あっ! 二人ともずるいぞ! 僕が入ろうかと悩んでいるスキに!」


 慌ててユヅキも後を追う。

 おい……。

 意味深な表情をしておいて、ただ湖に入りたかっただけかい。


「まったく……子どもなのですから」


 そんな様子をローズが苦笑しながら見ている。


「いいじゃないか。せっかくだし、俺らも入るとするか」


「あら。よろしいんですの?」


「かまわないだろ。全員で入った方が楽しいし、エルフの湖に入れる機会なんてそうそうない。ローズも入るか?」


「わたくしは遠慮しておきますわ。でも、ありがとうございます」


 ローズは少し恥ずかしそうにして、首を横に振った。

 どうやら、人前で裸になるのが苦手のようだ。


「いいじゃないか。初めてのときは、みんなの前でさんざんよがり狂っただろ? 今さら何を恥ずかしがる?」


「そういう問題ではありませんっ!」


 ローズが真っ赤になって反論してくる。


「まぁいいさ。じゃあ、俺たちだけで先に楽しむとしよう」


「わたしもお供します!」


 俺とシルヴィは手早く服を脱いで、湖に飛び込む。

 ひんやりとしていて気持ちがいい。

 先に入っていたリン、ミナ、ユヅキと共に、5人で湖水浴を堪能する。


 美少女たちと全裸で水浴び……最高だな。

 しかし、こんなことなら水着を持ってくればよかったかもしれないな。

 俺はそんなことを考えながら、水浴びを堪能していったのだった。

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