154話 おはよう、コウタちゃん……

 打ち上げの翌朝になった。


「ふう。昨日は飲みすぎたな……」


 俺は宿の一室で目を覚ます。

 少し頭が痛い。


「うっ。気持ち悪いです……」


 隣で寝ていたシルヴィが苦しそうにしている。


「おい、大丈夫か?」


「……ちょっとだけ気分が悪いです……」


「はいよ」


 俺はコップを取り出し、水を注ぐ。


「ほら、これを飲め」


「ありがとうございます……」


 シルヴィは水を受け取り、一気に飲む。


「ふぅ。スッキリしました」


「ならよかった。さて、みんなを起こすか。……あれ?」


 違和感を覚えた。

 いつもは5人でいっしょに寝ている。

 俺、シルヴィ、ユヅキ、ミナ、リンだ。

 しかし、この場にはもう1つの気配がある。


「……ん。おはよう、コウタちゃん……」


 ティータが俺の横でそう言う。


「お、おう。おはよう……」


 俺は戸惑いながらも挨拶を返す。


「あ、あの……。これはどういう状況でしょうか?」


 シルヴィが動揺した声で尋ねてくる。


「俺にもわからん」


 記憶をなくすまで飲むのは、俺の悪い癖だ。


「……へえ。覚えてないんだ? ひどいね……」


 よよよっと泣き真似をしながら、ティータがそう言った。


「……これは人族とエルフ族の種族間の問題になるよ……?」


「マジですか」


「……うん。マジだよ……」


 どうやら、冗談ではないらしい。


「わかった。では、責任をとってティータも俺のハーレムに加えて……」


「ちょっと待つのです!」


 ミナがそう口を挟んできた。

 いつの間にか目を覚ましていたようだな。


「どうした?」


「ティータさんは、昨晩自分からコウタくんに詰め寄っていたのです!」


 ミナがそう言う。


「……バレちゃった……」


 ティータがそう言ってクスッと笑う。

 ……くそっ。

 完全に遊ばれてるじゃねえか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る