153話 乾杯

 打ち上げを行おうとしているところだ。

 シルヴィ、ユヅキ、ミナ、リンに加えて、ローズとティータもいる。


「喋ってるところ邪魔しますね。お料理ができましたよ~!」


 店員の女性が皿を運んでくる。


「おお、ありがとう」


 彼女が俺たちのテーブルにそれらを並べていく。


「それでは、ごゆっくり~」


 女性は去っていった。


「さてと。せっかくの優勝パーティーだ。みんなで楽しまないとな。ローズとティータもせっかくだしいっしょに飲もう」


「あら。ありがとうございます。ではお言葉に甘えて……」


「……ん。ありがとう……」


 俺はまず乾杯用のジョッキを持つ。


「さあ、改めて……。我らの勝利と新たな出会いを記念して、カンパーイ!」


「「「かんぱいーっ!」」」


 仲間たちとグラスをぶつけ合い、勝利を祝う。


「コウタ、優勝おめでとーっ!」


「流石です、ご主人様!」


 ユヅキとシルヴィが改めて祝福してくれる。


「ありがとよ」


 俺は笑顔で答える。


「くぅっ! うめぇなぁ! この肉!」


「こっちのお魚も美味しいのです」


 リンが豪快に食べ、ミナは小動物のようにちょこまか動きながら食事を楽しんでいる。


「ここのお酒はなかなかですわね」


「……うん。いい感じ……」


 ローズとティータが満足そうな表情を浮かべている。

 そして、俺たちが適当な雑談で盛り上がっていく。


「ところで、コウタ殿はどうしてこの大会に出てみようと思ったのですか?」


 ローズがそう尋ねてくる。


「実は、俺には夢があるんだ」


「へえ。どんな?」


 彼女が興味津々といった様子で聞いてくる。


「俺の夢は、ハーレムを築くことだ。そのためには、もっと強くなり、もっと稼がなければならない」


 現代の地球では、男女の共同参画が広まりつつあった。

 それはそれでいいことなのだろうが、女性には妊娠という大きな生物的な負担がある。

 そこを考慮すれば、男性の方が少し多めに稼ぐべきだろう。


 この世界にはジョブやスキルというシステムがある分、男女の性差は縮まっている。

 しかし、妊娠するのが女性という点は同じだ。

 やはり男の俺が稼いでいくべきだろう。

 しかも、ハーレムを目指しているわけだからな。

 みんなに不自由な思いをさせないように、もっと上を目指すつもりだ。


「なるほど。それで強さを求めているのですね。いい心掛けだと思いますわ」


 ローズはそう言って微笑む。

 ハーレムと聞いて、もっと引かれるかと思ったが……。

 意外に普通の反応だ。

 まあ、貴族には側室や妾が付き物だしな。

 これはワンチャンあるかもしれない。


「俺自身が強くなれば、それだけ収入が増えるし、女にもモテる。一石二鳥どころか三鳥くらいある」


 俺は苦笑しながらそう答えた。


「ふふ。コウタ殿は面白い方ですね。ティータ殿もそう思いません?」


「……ん。エルフは繁殖欲が小さい種族。コウタちゃんのような男の子はめずらしく感じる……」


 ティータがそう言う。

 俺のことをちゃん付けで呼んだな?

 そういえば、エルフは見た目が若々しいまま歳をとる種族だったか。

 ティータの外見年齢は10代中盤だが、こう見えてもっと年齢を重ねているのかもしれない。


「ははは! そりゃどうも」


「わたくしも応援してますわ。頑張ってくださいませ」


「おう。頑張るぜ!」


 こうして、打ち上げは盛り上がっていった。

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