122話 石鹸

 宿屋で貸切の浴場に入ったところだ。

 湯船に浸かる前に、まずはそれぞれが体を洗い始める。

 ふと、背後に気配を感じた。


「ご主人様。お背中をお流し致します」


 俺の後ろにやってきたシルヴィがそんなことを言ってくる。


「ああ。頼む」


「かしこまりました」


 シルヴィの柔らかい手が俺の背中に触れる。

 タオルを使わずに手で洗うのか?

 予想外だが、これはこれで素晴らしい。


「いかがでしょうか?」


「悪くないな」


「それはよかったです」


 シルヴィは嬉しそうな声で言う。


「おっ! せっかくだし、あたいも洗ってやるよ」


「ボクも参戦するのです」


 リンとミナもこちらにやってくる。


「シルヴィっちは背中か。じゃああたいは、右腕だな!」


「ではボクは左腕なのです」


「おお……。これはいい。最高だ」

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