第3話 お茶目な主治医2

新型ウィルスの感染が拡大し始めてから、我が家では毎年、インフルエンザワクチンも接種することにしている。

新型ウィルスのワクチンも、もちろん接種済みだ。

新型ウィルスのワクチンは『筋肉注射』とのことで、それほど痛みは無いが、インフルエンザワクチンは確か『皮下注射』だったと思う。

針を刺した後、液体を注入する時が、割と痛みが強い。


私は外的痛みには割と強い方なので、幼い頃から注射を嫌がったり泣き叫んだりした記憶は全く無く、今でもそれほど嫌ではないのだが、母は痛みに滅法弱い。

どれほど弱いかと言うと、テレビで注射の映像が流れる度に、『痛い、痛い・・・・』と言って、目を背けるほどだ。

痛いのは注射されている人であって、母ではないんだけど。


ある時、インフルエンザワクチンの話を主治医としていると、主治医は母にこう言ったという。


「インフルエンザのワクチンは痛いからね、僕はいつもお尻に打つんだよ。お尻は痛みを感じにくいからね」

「ああ、そうなんですか(いいなぁ)」


と。

側に控えていた看護師が、小さな声で言った。


「平さん、嘘ですよ」


またも、母はプリプリと怒りながら、病院から帰って来た。

どうも、主治医は母を揶揄うのが好きらしい。

それは、私もわかるけどね。

母は揶揄うと、とても面白いからね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る