第4話 気づかない人

彼は、私が髪を切っても、一向に気付かない。

セミロングからボブにしても、気付かない。

事前に「今日美容院行って髪切ってくるよ」と言って、翌日に会っても、気付かない。

会ってから、いつ気づくかなー、と思いながら一緒に過ごすけど、大抵最後まで気づかない。

もう、面白くなっちゃって、別れたあとに

『やっぱり気づかなかったねー』

なんて、メッセージを送ってみたりして。


今まで一度として、彼の方から「髪切ったね」などと言われた事は、無いように思う。

彼曰く


「恥ずかしくてまともに見られないんだよ」


とのこと。

・・・・付き合いたてのカップルでもあるまいし。

何言ってんだ、まったく。


世の中の大半の女性は、髪型の変化には気付いて欲しいと思うだろうし、それは女性に限った事ではなく、誰だって、大きなイメージチェンジをしたならば、気付いて欲しいと思うのは、当たり前の気持ちだと思う。

だけど。

私はもう、諦めている。

彼は、気付かない人なのだ。

世の中には、そのような人が居たって、いいだろう。


ただ。


この、感染症対策の期間中会うのを控えていた間に、私の髪がだいぶ伸びた。

こんなに髪を伸ばしたのは、小学生以来かもしれない。

髪の毛を洗うのも乾かすのも時間がかかるし、そろそろバッサリ切ろうかな。


そんな話をメッセージでしたら。


「そんな長い髪見た事無いのに、俺が見る前に切るの?!」


と宣った。


どの口が言っとるんじゃいっ!


だいぶ切ったところで気付かない人が、それを言うかね。

まぁ。

どうせ気付かないんだから、私が切りたいタイミングで切りますけどね。

…もし、万が一にも気づいちゃったら。


「寒くて縮んじゃったんだよねー」


とでも言っとくか。

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