子供弁当

@pyun_

腹をすかせた子

俺、池田竜之介は小さな定食屋を経営している。

経営していると言っても、そんな大層なものではなくて親が自宅の一階で俺が子供のころに始めた小さな定食屋だ。

別に料理が好きなわけでもなく、大学卒業までに就職が決まらず、自宅でバイトをしていたこともありそのまま跡を継いだ。

一昨年母親が病気で倒れて亡くなってから、親父はかなり落ち込んでしまいそのまま跡を追うように亡くなってしまった。

だから今は俺が1人で店を切り盛りしているけれど、近所の常連さんくらいしか来ないし正直言って経営はかなり苦しい。


「はあ〜。今日も疲れたなあ。」

夜9時に俺は毎日閉店のため暖簾をしまうために店の外に出る。

残暑はまだ厳しいが、空気はだいぶ秋めいてきた。

暖簾を一旦店に置きもう一度外に出てタバコに火をつけた。

ふうーっと一気に煙を吐く。

今日も大して客が来なかったなあ。


いつもなら、このタバコタイムが自分にとってすごく落ち着く時間なのに今日は何だか落ち着かない。

何となく視線を感じ、ふと隣に目をやると子供がうずくまっていた。

「うわぁ!!!!!!!」

思わず大きな声を出してしまった。

子供は俺の大きな声にも動じずうずくまっている。


子供、、、だよな。

小学生くらいに見えるけど、こんな時間に何してるんだ?

男か?女か?

ずいぶん小汚い格好してるな。

生きてるよな?

もしかして幽霊とか?怖っ!


色々な考えが頭をよぎる。

多少の恐怖を感じながらもこのままにしておくことはできないので俺は子供に話しかけることにした。


「えっ、、と、、。腹減ってるのか?」


色々聞きたいことはあったし言いたいこともあったのに、一言目に何故かそう言ってしまった。

子供は顔も上げず小さく頷いた。

「いい匂いがしたから。こんなところに座っていてごめんなさい。」

小さくか細い声で申し訳なさそうに答える。


「そっか。とりあえず中に入れよ。なんか食べさせてやるよ。」


そういうと子供は顔をあげて嬉しそうに笑った。よく見るとかなり痩せて見えた。

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