今でも僕らはこの星で

久住 海

第1話 無知

波音が大きくなっていく。


昔は、この音が好きな人も多かったらしいが、俺はこの音が大嫌いだ。頭が痛くなる。


「おーい。行ってきてー。」


村長が気怠そうに呼びかける。


俺たちは、この時期になると波の中に混じっているゴミの片付けを手伝わされる。

ゴミの殆どは、昔のフネとかクルマとか、大きな鉄の塊だ。


昔は、今の何倍も陸地があったのに、その殆どを硬くコーティングしてたらしい。だから、このクルマって奴を1人一台持ってたんだとか。

そりゃ、片付けても片付けても出てくるわけだ。



「はぁ〜、めんどくさっ」

「おーおー、ジュンも言うようになったな〜

昔は、怖がってたくせに!」

「うるせぇーよ!そりゃ、こんだけやったら慣れるだろ」

「まぁな〜。それに、今ではエリ達も手伝ってくれてるしな、ビビってたらダサいもんな!」

「あいつらも最初は怖かったろーなー」

「かもなー。まぁ、エリはお前と違って最初っからビビってなかったけどな」

「うるせぇっ!」


カイトはいつも、俺を馬鹿にしてくる。

生まれた年が同じ俺らは、いつも一緒にいた。


だから、カイトだって本当は気づいてたはずだ。

エリが初めて片付けに駆り出された時、俺よりずっと怖がっていたことに。



だけど、さすがのカイトも知らないだろう。俺があの日、手についた泥をエリの肩で拭いた時のエリの怒った様な笑顔を。初めて見た、輝く笑顔を。

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