天網恢恢疎にして漏らさず
ナガイエイト
第1話
「天網恢恢疎にして漏らさず!どんな悪党も必ず捕まえる!魔法少女名探偵マキ!」
そう声高らかに叫ぶマキ(実名、
随分とおかしな格好だ。もしここがコミケやコスプレ会場であるなら、随分とおかしいとまでは思わなかったかもしれないが、ここは多くの家々が建ち並ぶ住宅街だ。違和感、異端でしかない。
「日々の平和を守るため、私は今日も悪を探しだす!おー!」
時刻は午前7時30分。通勤ラッシュ真っ盛りのこの時間で、マキはサラリーマン達と一緒に駅へ進み始めた。
シワ一つ無いスーツを着込んだリーマン達の中に紛れる奇抜な格好をしたマキは、魔法少女の如く浮いていた。
しかし、彼女はそれを恥ずかしいだなんて思うことはなく無事に駅に到着し、そこで本日一つ目の悪を見つけた。
「コラあなた!煙草は喫煙スペースで吸いなさい!そして、喫煙スペースはこの駅には無いから我慢しなさい!」
奇天烈な服装をした成人女性にそう注意された駅舎前で紫煙燻らすサラリーマンは、しかし彼女の言葉を無視して煙を吐く。
そんなサラリーマンの態度を見て、マキは行動を起こした。
「天網恢恢疎にして漏らさず。他人の迷惑を考えず、己の快楽の為に動くのは悪だ!てあ!」
そう言ってマキは、左手に持っていた虫眼鏡でサラリーマンの持つ煙草を殴り落とした。
「チッ」
サラリーマンは短く舌打ちをして、足早にその場から去っていった。
勿論、彼がその場から去った理由は、摩訶不思議な格好をした成人女性に絡まれることが恥ずかしく、そしてめんどくさいと思ったからで、決して改心したとか、マキに
しかし、それに気付いていないマキは
「口程にもない悪め!成敗!はっはっはっは!」
と、高笑いをしたのだった。
そのままマキは、スキップをしながらステッキに刺さっているSuicaを使って改札を通り抜け、駅のホームへと向かったのであった。
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