第6話
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「なぜだ! なぜこんな地下牢に!」
王城に突進していった元士爵夫妻。
しかし、平民に王城の侵入は許可されておらず、さらに元士爵には国家反逆罪の罪がかけられていた。
『飛んで火に入る夏の虫』とはこのこと。
おっと『飛んで火に入る夏の令嬢』も夫と共に現れたようだ。
「いやよ、私たちは何も悪くないわ!」
「離せ! 我々は正当な訴えを主張しただけだ!」
両手に枷をつけられた状態で降ろされてきた二人に夫妻は目を丸くする。
手枷は暴力沙汰を起こした犯人につけられるもの。
それを二人はつけているのだ。
ちなみに王城前広場で騒いで捕まった夫妻には手枷はつけられていない。
「ソフィー殿!」
「マリーナ!」
「え? 義父上⁉︎」
「パパ、ママ!」
感動の再会である(二時間ぶりだが)。
ただしここは地下牢で、片方の夫婦は手枷つき。
しかし、すぐにお別れである。
親子だ家族だというのは関係なく、同じ檻に入れられない。
ご親切に隣同士にもならない。
「お前たちはこっちだ!」
そう言ってさらなる地下へと引き摺られていく。
軽犯罪や重犯罪、暴力に詐欺など罪が違えば収容場所も違う。
軽犯罪で罰は受けるものの簡単に出られる罪人に殺人や報復を依頼されたり、罪の犯し方や隠し財宝ならぬ隠した
「いやあ! パパあ、ママあ!」
「「マリーナぁぁぁ!」」
「義父上! 屋敷が奪われました。『家賃が未払いの上、士爵ではなくなった以上これからの支払いも望めぬ。よって契約どおり明け渡してもらう。家財は売って家賃の足しにする』と言って追い出されました。抵抗したのですが……」
ソフィーは賢かった。
短い邂逅に自分たちの情報を伝えたのだ。
声が途切れたのは猿轡をかまされたか、ただ下の階に到着して聞こえなくなっただけか。
階ごとに声が漏れなくされている。
下の階の牢に入れられた者の声が届いては問題だからだ。
「あなた……」
「たしかに家賃を後回しにしていたが……。今まで一ヶ月遅れても文句は言われなかった。士爵という立場がそれを許してくれたのだろう」
「何ということでしょう。あの子たちは家を守ろうとして暴れてしまったのね」
「あの剣を。下賜された剣を売ってしまったことが失敗だった」
歳の差略奪婚のこちらは事情を説明してもらったため現状を理解し把握できている。
彼らも略奪婚の直後の世論に叩かれてきたのだ。
たとえ罪に問われない二人でも、周囲から蔑まされてきた。
しかし状況を読めず、ただ正当な権利を主張したと思い込んでいる新米略奪婚組は世間の冷たさをまだ知らない。
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