ミミクリーカブトムシ
私誰 待文
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今年は例年にも増して
地面の焦げた
*
「なぁなぁ
2時限目が終わるとほぼ同時に、隣の席にいた
有戸は当時、クラス内では校内で最も虫について詳しい少年だった。彼は一週間の約半分、昆虫の情報が細かく書かれた書籍を、授業中にも関わらず
だから、いつしか有戸は“昆虫博士”として、クラス内に
「そのカブトムシの、何がすごいの?」
私は、4年を通して彼と同じクラスになっている友人として、分かりやすく興味を持ってみる。昔から、どんなに小さな発見でもUMAと遭遇したように
「驚くなよ桐鍬。俺は確かにこの目で見たんだ、擬態するカブトムシをな!」
*
「
得意げに鼻を話す
「でも擬態する虫なら、2年生の夏休みにまとめてたじゃん。『
私を疑問は予測済みだったようで、彼は始終思い通りに事が運んでる人間特有の
「じゃあ、俺が昔に発表した『十連十山にひそむ虫について』の内容は覚えてるか?」
「ぜんぜん」
「なんだよ……。じゃあ簡単に言うとな、擬態する虫は基本、チョウやキリギリスとかの、天敵に
私がかぶりを振ると、またも勝ち誇った表情をする有戸。
「する必要がないんだよ。チョウやキリギリスは長い年月の中で、天敵に見つかりやすい
説明不足な点もあると思ったが、知らない情報を教えてくれたので、素直に「なるほど」と返す。
「でも有戸くんが見つけたカブトムシっていうのは」
「そう! あれは完璧な擬態だった、あんなカブトムシ
栄光を懐かしむように、その
「なぁ
唐突だった。今までの3年間は、彼が物珍しく話す内容をただ、私がうんうんと
「今まで俺が話すだけで、実際に虫捕りへ連れてったことないもんな。だからさ、一緒に行こうぜ!」
「行っていいの? もし僕が見つけたらどうするの」
「その時は俺にくれよ。お礼に家の
何だか虫のいい話だと思いつつ、彼の熱量の前に冷たくあしらうのは気が引けたので、とうとう私は彼と一緒に
「じゃあ一週間後の今日、門の前でな! 虫かご忘れんなよ!」
その日は、入念に計画をノートに書いている彼を横目で見るだけで、会話はしなかった。
〈続く〉
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