変わるということ(2)

文化祭当日、私と高原君は同じクラスで同じシフトに入ることになっていた。


「おはよう、晴れたね。」

高原君が話しかけて来てくれた。

「う、うん、そうだね。」

私も返事をしたが、周りの目が気になって仕方なかった。


今も、数人の女子が私と高原君を見て

ヒソヒソと話している。

主に私の悪口だろう。


私の心にまた暗雲が垂れ込めて来た。

やっぱり私じゃ不釣り合いなのかな。


心の中の葛藤は以前からずっとあった。


それでも、私は変わりたかった。

自分の思っていること、考えていること、

感じていることを彼に伝えたかった。


だから今日は、周りの目を極力気にしないようにした。

少しわがままでも、自分のやりたいことをやろう。


「あ、あ、あのさ。」

「どうしたの?」

「も、もし良かったら、私と一緒に文化祭、回ってくれないかな。」


少しの沈黙があった。

やっぱり私じゃダメなのかな。






「いいよ。」






彼は笑顔でそう言った。

その笑顔は、太陽よりも眩しくて、今まで見たどの顔よりもキラキラした顔だった。


こうして、私と高原君は2人で回ることに

なった。





「ねぇ、私あのクラス出し物行ってみたい。」

「いいね、行こうか。」


今日の私はいつもと違った。

いや、無理やり変わろうとしていたと言った方が正しいのだろうか。

とにかく積極的に彼に話しかけた。


私が話しかける度、彼は笑顔になった。

それが嬉しかった。


「え、え、え、」

後ろから驚きの声が聞こえてくる。この声は、まさか


「えーー、ち、千遥が男の子と文化祭回ってる!!」

「ちょっと花菜、あんたこんな道の真ん中で何叫んでんのよ。」


「あ、ご、ごめん。」


2人とも大声で騒ぎすぎていた。

周りからの視線が痛い。

それを見て、高原君は笑顔だった。


「2人とも騒がしすぎだよ笑」

そう言われて私たちも笑顔になった。


「ってか遼太君久しぶりだねー。

クラス違うから全然会えなかったし。」

「え、うん、まぁそうだね。」


花菜はやけに親しそうに高原君と話していた。さすが陽キャ女子といった感じだ。

一方高原君は少しタジタジなようだった。


その後は3人で文化祭を回った。






気づけばキラキラとした時間はあっという間に過ぎ去っていった。


もう文化祭は終了していて、各々が写真を撮ったりしていた。

私は高原君を呼び出した。初めて面と向かって話したあの場所だった。


私は今日ここで、私の思いを彼に直接伝えようと思っていた。

彼はどう思うかな、喜ぶかな、驚くかな、

笑ってくれるかな。


なんて考えながら私は待ち合わせ場所に着いた。

そこには2人の影があった。


高原くんとあと1人、誰かがいる。

その人を見た時、私は自分の血管が凍ったのを自覚した。


その人は、私に気づく様子もなく言う。








「好きです。付き合ってください。」

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