第7話

「………………。」

 視界に入る見慣れた天井。風で揺れるカーテン。そこから差し込む光は煩わしさを感じさせる。

「もう朝よ?起きなさいよ~」

 部屋の外から聞こえてくる声も。朝食を作る音も。匂いも。全てもが変わらない日常であることを。現実であることを嫌が応でも突きつけてくる。あの非日常はーー

(ーー夢、だったんだ)

 はぁ、とため息が漏れる。あの思いを知ってしまった後で、私はどう生きていくのだろう。どう生きていけばいいのだろう。

「起きなさいって言ってるのが聞こえないの!?」

 再び外から声が聞こえる。幾らかヒステリックさを含んでいる。これを無視しようものならノックも無しに部屋に突撃された挙げ句にフライパンとおたまのはた迷惑な大合奏が開催されてしまう。それは幾らなんでも勘弁してほしい。

 なら、どうすればよいのか。そんなのはもう分かりきったことだ。

「もう起きてるよ、お母さん。今行くね。」


 非日常を望んだあの思いがきっと私の本性だ。しかし、『みんな平等』なんて言葉の裏にある同調圧力的社会を生き抜くためには、みんなと同じでなければならない。みんなが考える『普通』から外れれば腫れ物扱いだ。だからこそ、みんなと同じでなければならない。そう、例え自分を押し殺してでも。


ため息をついて私は自分をイツワリじ。平和タイクツな日常へと足を踏み出した。

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