譲渡

便利屋と約束を交わしたことをアオに言い、

アオが便利屋へ映像を渡しに行った。


「おぉ!これが噂の。」


「お願いします。アカをあいつらから救ってやりたい...!」


「純愛ぃ!ってね。わかったよ、やってみるから待っていてねぇ。」


便利屋に映像を渡すとアオはクロに会いに行った。


「俺が録画した映像...渡したぞ。」


「ありがとうです!アオ。」


クロはシロをアカから救うため、

アオはアカをシロとクロから救うために

手を結んでいる。




翌日、電話はアオの元に来た。

クロがそうしろと言ったからだ。

クロは携帯電話を持っていない。

固定電話でかかってきては困るのだ。

シロが出てしまう可能性の方が高いから。


「もしもし、終わりましたか?」


『あぁ!警察に言ってしまって構わないね?』


電話の向こうからの確認にアオは


「はい。」


と迷いなく答えた。


便利屋は『くくく』と笑い電話を切った。




クロはアオの元に電話が来たことは知らなかったが警察がやって来たことですぐにピンと来た。


「どうも、こういうものです。」


警察の制服を着た人が二人程で玄関に出て行ったシロと会話している。


「通報がありまして...。」


「何のですか?」


流石シロだ。平然としている。

でも混乱しているはずだ。

隠蔽はクロが完璧にこなしていて、クロはシロのことを親のように慕っていて裏切らないはずなのに。

アカは親友だし、アオは脅してあるのに。

誰が通報をしたのか。

三人以外なら何故知っているのか...などと

思考を巡らせているはずだ。


そしてクロにとってこのタイミングは都合が良かった。アカが家に来ているのだ。


「殺人です。家の中を調べてもよろしいでしょうか?」


「いいですよ。」


そりゃあ許可を出すだろう。

うちどころか誰の家にも遺体なんてないんだ。

見せてはいけないものなんてほとんどない。


「これはなんですか?」


警察の人がその言葉を発した場所は意外にも

台所だった。


そういえばシロは犯行を包丁で行っていた。

つまり、クロはそこまで考えてはいなかったものの事はいい方に転んでいる。


「そ...れは...」


焦っていたのだろう。

血が完全に拭いきれていない包丁が見つかった。


刃には血液がべっとりと付着していたから

勿論念入りに洗っていたものの、若干血が付着していたのは持ち手のところだった。


冷静ならばシロは料理で手を切ったなどと言ってその場を乗り切ろうとするだろう。

調べられてしまったら終わりだが。

けれど、今はあからさまに態度に出てしまった。


シロの頭にあったことは捕まりたくないという意識よりもアカと離れたくないという意識だったのだろう。


「私がやりました。でも、私も被害者なんです。」


「聞かせてもらおうか。」


「私は...蒼井蓮瑠という人に盗聴されていました。それは罪になりませんか?

私は捕まっても構わないから...あいつも逮捕してください!」


自分が捕まっている時にアオと付き合いでもしたらたまらないと考えたシロは脅した通り

アオのことを警察に言った。


「それは本当なのかい?」


警察の二人は顔を見合わせて誰かと連絡を取った。シロが捕まりそうになった時、アカが

待ったをかけた。


「やったのは私です。通報に使われた証拠はなんですか?」


「とある映像です。室内で撮られたものなのだけれど。」


「それは私の家です。来てもらっても構いません。殺されているのは私の兄です。

私が殺しました。白鷺叶絵が憎かった何者かが映像を加工したんです。」


アカはシロのことを庇った。

少し作戦とは違った。

クロの作戦はシロの殺人を通報し、シロがアオの罪を告白し、アオがアカに罪を押し付けてアカが犯罪者となり、クロが少し残っている鬼の力を使ってシロを助け出して二人で逃げるというもの。


でもこの作戦には何個か穴があったからこのように少し作戦が変更されたのは嬉しかった。

アカが殺人の罪を被ってくれるならアカの罪は重くなる。

アオが盗聴していたという事実は消えなくなるからアカとアオ二人仲良く犯罪者だ。

シロは無罪になることが出来る。


ただ、画像を調べられるといけない。

シロの姿は加工されたものじゃない。

アカの犯行でないことがバレてしまう。





映像の調査結果は意外なことにアカの証言通りになっていた。

便利屋がアカの姿に加工していたのだ。

加工が巧みすぎて警察が信じた様子だ。

アオはこうなることを読んで便利屋に依頼し直していたのかもしれない。


とりあえず助かった。




アオはアカに頼ってもらいたいわけではなかった。

アカが罪人になるなら自分も罪人になって

一緒の立場になりたかった。

罪の枠は殺人と盗聴の二つ。

だから二人を一つずつの罪に当てはめてほしいとアオは便利屋に頼んだ。

便利屋の技術は本物で今までも何回か警察の目を誤魔化していた程のものらしい。


出来上がった映像はシロの犯行現場を変えた映像を見せて、シロの姿の上にアカの姿を乗っけてその上にさらにシロの姿を乗せるという加工がしてあって精度が高いものだった。

どういう技術を使ったのかは教えてくれなかったが相当の実力者だ。

気味は悪いが丁度いい。




アカはシロの罪がバレた時のために包丁に付いていた血を避けて指紋を拭い自分の指紋を付けていた。シロがシュを殺した当日に。


だから、映像と指紋解析の結果、アカに殺人の容疑がかかった。

本人が最初から肯定していることから警察はシロへの疑いを無かったものにし、アカを殺人犯として、アオを盗聴した犯人として

逮捕した。


形はかなり違ったもののシロが一人残されて

クロの作戦だとバレることなく成功した。


「クロ...。私どうしたらいい?」


「大丈夫だよ?シロにはボクがいる。

もし、アカの件が冤罪だってバレたらさ、

アカが守ってくれた意味が無くなる。

これからは二人で隠れて暮らそうよ。

ボク、自分で獲物狩れるようになったんだ。

ここから引っ越してさ、どこか遠いところで暮らそう?」


「そうだね...ありがとう、、、。」


シロは絶望しきった表情でそう言った。

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