恋の手紙と花火と嘘と

白犬狼豺

金曜日

「何だよ、用って」


 高校の体育館の裏で、タカヤは目の前にいた一人の女子高生に話しかけた。


「はあ!?あんたこそあたしに用があるんじゃないの!?」


 テンションの高い少しイラついた様子の女子高生、フミノ。


「いや、下駄箱の中にこの手紙が入ってて、この時間にここに来いって」

「え?あたしも机の中入ってたこの手紙にそうかいてあったから……」

「じゃあ誰が、たちの悪いイタズラか?」

「とにかく、あたし帰る!」

「待って」

「な、何?」

「その、なんだかわかんないけど、せっかくだしさ……。お、お茶しない?なーんてな。あははは……」

「……わよ」

「へ?な、何ですか?」

「いいって言ってるの!」

「え……」

「行くわよ!」

「は、はい…」


「あれ……誰もいない……」


 ショウは2人に遅れて体育館の裏のに来た。


「何してるの?」


 そして、カナエ。


「え?あ、いやー。今日好きだった子に告白しようと思ってさ、でも振られちゃった。来てないみたい」

「そう……どうやら私も振られちゃったみたい」

「そうなんだ……もしかして君も誰かに手紙を?」

「そうよ?」

「そっかー。じゃあお互いまた、頑張ろうね」

「……そうね、じゃあバイバイ」


 カナエはショウと別れて一人で歩いてゆく。


「待って!」


 カナエが驚いて振り向くと、ショウがいた。


「ハア……ハア……久しぶりに走って疲れた。文芸部運動しないから」

「そうなんだ。私も帰宅部だから最近運動してないわ」

「じゃあさ、運動してない同士でお茶でもどうかなって……思ってみたり?ほら……お互い振られちゃったわけだし」

「うーん……まあ、いいけど」

「本当?」

「うん」


 喫茶店にて、タカヤとフミノは2人でいた。


「俺、実は好きな人がいるんだ。幼なじみでさ……」

「へー、あたしも同じ部活でちょっと気になってる奴がいてさ……ところでいいの?奢ってもらっちゃって」

「ああ、気にしないで。相談に乗ってくれたお礼」

「よっしゃ」


 喫茶店に向かう途中の道で、ショウとカナエは自分の行動に動揺していた。


(勢いで声かけたけど、これって付き合う流れなんだろうか。でもお互い好きな人に振られてしまったんだしこれは……)

(勢いでOKしたけどこれって恋人になる流れなのかしら、タカヤの気持ちも確かめたかったけど、でも来なかったってことは、彼女いたってことなのかな……)


 ショウとカナエは喫茶店に着く。


「あ」


 タカヤとフミノに鉢合わせたのである。


(フミノちゃん、タカヤと付き合ってたんだ……)

(はぁぁ……ため息)


 大きな落胆をするショウとカナエにタカヤとフミノが声をかける。


「……よお」

「えー!なになに?!2人って付き合ってるの?」


 フミノは2人を見て若干興奮気味である。


「あはは……まあ、そうなのかな」と力なく笑うショウは、本格的な失恋になってしまったと、改めて心の中でため息をついた。

カナエも、自分の初恋にけりが付いたと、どこかすがすがしい思いでいた。

 ショウはタカヤとフミノに恐る恐る聞く。


「2人は、付き合ってるの?」

「いや、別に?」

!?


 以下、ショウとカナエのうろたえぶりをしばしお楽しみください。

ショウ

(えええええこの状況どういうことやねんまだチャンスあるやんけでもカナエさんと恋人っぽい雰囲気になってしもたし今日付き合って速攻別れるのってどうなんだろうかいや流石に彼女に悪いだろ)


カナエ

(どどどどどうしようどうしようどうしよう2人が付き合ってないってことは私振られてないの⁉︎いやでもタカヤ来なかったじゃんでも2人付き合ってないにしてもタカヤくんに彼女がいないとは限らないでもでも彼女がいるのに付き合ってもいない女子と2人で)


タカヤ

「なんかフミノちゃんと俺、2人とも手紙貰っちゃたんだよね、で何か俺が喫茶店に行こうって誘った」


ショウ&カナエ

(お前かあああああああああああああああああ)


ショウ

(いやむしろナイスだぜ!これでカナエさんと俺がとフミノちゃんに手紙を送った本人だと暴露してしまえば!)

「いや実は俺とカナエさん手紙をムグッ」

(おいいい何してんだカナエさんんんんんん!この千載一遇のチャンスをみすみす逃すのか俺の口を塞いでいるこの手を退けるんださあHarry!)


カナエ

(何言おうとしてんのよshut up!黙りやがりなさいよこちとら花も恥らう乙女やぞそんなことバラされたら恥ずか死んでまうわ!!)


「まさか2人も手紙で?」とフミノが聞く。

「おほほほ、まそんなところでございますわ」

 カナエは食い気味に答えた。


(終わった……)


 そんな二人の秘密の攻防があったとはつゆ知らず、タカヤはある提案をする。


「今度の土日の花火大会一緒に行かね?」

「もうタカヤくんてば、2人に悪いって」


 フミノがタカヤに注意して、タカヤが「そっか」と言いかけた瞬間。

「いいや一緒にお願いします!!」

 ショウとカナエは食い気味に答えた。


(ここでフミノちゃんが好きだって本心をみんなに伝えなければ)

(タカヤが好きだって三人に言わなきゃ!)


終わる!

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