第4話:欲しい物・イーライ五歳

 俺はセバスチャンのお陰で莫大な魔力を手に入れた。

 魔術もある程度は覚えられた。

 これほど早く覚えられる事を、教育係だけではなく両親も褒めてくれた。

 誰かに心から褒めてもらえる事、喜んでもらえる事がうれしいと、初めて知った。

 まあ、前世で小学六年生まで生きていられたからだけどね。

 よく休まされたけれど、それでもこの世界ではとても役に立っている。


「イーライ様、五歳のお誕生日おめでとうございます。

 普通ならまだまだ子ども扱いさせていただくところですが、イーライ様の努力と成果を考えましたら、ある程度は自由にしていただいても構いません。

 何か欲しいものがありましたら、遠慮なく仰られてください。

 ある程度の我儘なら許すようにと、公爵様も奥方様も申されておられます」


 父上と母上は、心から俺を慈しんでくれてくださっている。

 それが執着になってしまったのでしょうとセバスチャンは慰めてくれたけれど、妹が生まれた時には、両親が可愛がる妹を思わず傷つけそうになってしまった。

 セバスチャンがそれを予測して、魔宝石と魔力吸収の魔法陣を用意してくれていたから、暴走しそうになった魔力を妹に叩きつけなくてすんだ。

 あの時には、自分が身勝手な母の血を受け継いでいると分かって死にたくなった。


『イーライ様、人とは、生まれたままではとても醜い生き物でございます。

 それを抑える常識と理性を、成長とともに身につけていくのでございます。

 今のイーライ様はまだ二歳ですから、気になさる事ではありません』


 セバスチャンがそう言ってくれなければ、俺は狂っていたかもしれない。

 狂わなくても、自分を許せなかったかもしれない。

 部屋に閉じこもって、誰も傷つけないように誰にも会わなくなったかもしれない。

 それくらい父上と母上の愛情に固執していた。

 あれからだ、セバスチャンの鍛錬を倒れて眠るまで続けるようになったのわ。

 父上と母上の愛情だけに拘らず、他の人の愛情も大切にするようになった。


「そうだな、なにかペットを飼うわけにはいかないかな。

 父上も母上も妹達も愛しているし、側にもいてくださるが、心から愛せる動物にも側にいて欲しいな、家族に執着し過ぎないように」


「それはとてもいい事でございますね。

 最近では色々と物騒でございますし、イーライ様をお守りするのが人間だけというのも心もとないですから、召喚獣か使役獣を側に置きましょう」


 おい、おい、おい、なんでそうなるのだ。

 俺は可愛い愛玩犬や猫を思っていたんだ。

 それが駄目なら、クラスメイトが飼っていたという、ハムスターや兎でもいい。

 熱帯魚やメダカでも構わないぞ。

 獰猛でいかつい軍用犬や魔獣など飼いたいわけではない。


「では魔境に行って、魅了の魔術で魔獣を従魔にいたしましょう」

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