忘れがたきイズールト
中田もな
aon
優しい色合いの花が飾られた、島の小さな教会。静寂な雰囲気の中、イズールトは神聖な祈りを捧げた。丁寧に編み込まれた金色のロングヘアを垂らしながら、誰もいない十字架に向かって、静かに頭を下げる。
この教会で祈りを捧げるのは、彼女の欠かせない日課だ。小さい頃は両親に言われるがまま、よく分からずに彼らの真似事をしていた。今となっては、すでに昔話だが。
ステンドグラスに赤い夕陽が差し込み、白いワンピースを虹色に染める。その光を感じ、イズールトはゆっくりと碧眼を上げた。今日の祈りも、これで終わりだ。コツコツと床を鳴らして、その場を後にする。
外に出ると、爽やかな風が草を揺らしていた。海のにおいを孕んだ、塩辛い風。……うら若いイズールトは、このにおいしか知らなかった。そしておそらく、これからも。
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