第2話 先客のルル



 その建物は、何らかの研究所だったらしい。


 〇〇研究所、と書かれていたが、〇〇の部分がかすれて読めない。


 パスカルは、鋼鉄の建物の中に走りこむ。

 そこにはすでに先客がいた。


「君も雨宿り?」


 細身の少年だった。


 長い青髪で、穢れのない湖の色をうつしとったかのような水色の瞳をしている。


 少年はルルと名乗った。

 そして、自分がもっていたハンカチをパスカルへと渡した。


「まいっちゃったね」


 苦笑いする少年からは、嘘や陰謀の気配はしない。


 パスカルは今まで、少女の一人旅を続けていた。


 そのため、将来の苦労を察知し、問題を回避するために、初対面の人間の言う事を無条件に鵜呑みにしないように学習していた。


 しかしそんなパスカルから見たルルはただのお人よしの少年に見えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る