スタンピード
!?
衝撃は突然にやってきた。窓ガラスが突然に割れて、部屋の中の物が途轍もない勢いで奥へと飛ばされていく。
そして全身にナニカが打ち付けられる感覚……砂か……!
とっさに目をつぶったため目に対したダメージは無かったが、体は背中から壁に激突した。痛みは無いが、突然の事で何が起きたのか理解できない。
割れた窓から外を見る。高いステータスの恩恵で夜目がきいても、向こうで何が起こったのかは遠すぎて見えなかった。
だが、あの轟音にあの衝撃。十中八九あの奥で何かが起きたのだろう……あんな遠くからきて、これ程の威力……相当ヤバい事が起きてるのか……!
『――……トトトトドドドドドドド!!!!!!』
その時、どこからか、『ナニカ』が……いや、『ナニカたち』が迫ってくるような音が聞こえてきた。おそらく人々が逃げているのだろう……
その予想は、どこからか聞こえてきた言葉に切り捨てられた。
『スタンピードだァァァァァァ!!!!!!!』
かつてジグラによって引き起こされ、ドバンを襲ったであろう一種の災害が、クラギスの喉元まで迫っていた。
――――アキラ視点――――
おいおいなんだよ今の……地震か? の割には揺れが小せぇし、何かの爆発による強い爆風だとしてもなぁ……この部屋って一方向しか窓がねぇから他の方向からの風はわかんねぇ。窓は割れてねぇから、城下町方面からの爆風ではおそらくない。
すぐに揺れはおさまった。仮に地震だとしたら、しばらく経ってまた揺れる可能性は十分にある。今の所この城が崩れる気配は全くねぇが、火龍みてぇなバカ強い奴が来たなら……
――コココココ!!!!
部屋に力の籠もったノックの音が響いた。
「陛下! 緊急事態です!」
扉の向こうから切迫したような男の声が聞こえてくる……なんだ……何が来やがった……!
「その場で申せ」
「はっ! スタンピードです! 方角は北東、数はおよそ千! モンスターはほぼ全てが5級以上に相当、距離は現在皇都から約2キロ、先頭が皇都に到達するのはおよそ2分後! 進路上に民家や民間人は無しとの事!」
スタンピードだと!? それって前にドバンの街を襲ったっていう…………
てかほぼ全てが5級以上に相当っておかしいだろ! しかも方角は北東だ……強い魔物がウジャウジャいる、いかにもスタンピードを起こしそうな西の魔の森じゃねぇ……それに……
『衝撃波の後にスタンピード』
という流れは、
『災害の後に避難を開始する民衆』
と同じ……!
5級以上相当の魔物が『民衆』に当てはまるとしたら……『災害』としてあり得る存在は……
「――ッッ!!」
考えうる限り最悪の結末が重圧となって全身に降り注ぐ。
「第7騎士団と第3飛竜隊に出動させよ! 加えてギルドに冒険者出動を依頼、そして城内の冒険者達に協力をあおげ!」
「はっ!」
男の声は短く切られ、後に慌ただしく廊下を駆ける音が尾を引いた。
「アキラ……」
視線を切った皇帝が、俺の方を見た。わかってるよ……あんたが俺に何を求めているのか……
……俺、この世界に来てから感覚が麻痺ってやがるな……本来なら死ぬかもしれないという怖さに震えてるだけなのに、今は体張って食い止めようとして……
ありうる結果のセーフティーネットは破れているのに、それを当たり前かのように受け止めてる自分が恐ろしい。
これが『異世界転移』か……染まってやるよ、異世界に。どうせまたいつか何かに染まるんだ。
「行ってくる……北東だな?」
俺は南側の窓を開け、外に土魔法で足場を生成し、その上に飛び乗る。そして足場を金斗雲の如く動かして、北東へと向かった。そして……
……『念話』!
強力な助っ人を求めて念話を飛ばした。
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