違う世界 同じ空

 火龍が去っていった後、俺はしばらく空を見上げていた。火龍……いや、『生命体』を見送る時は、見えなくなった後も、しばらくその方向を見るのが自分の中のお約束であるから……というわけではない。見えなくなるまではその方向を見るが、その後はそんな事しない。ただ単にじっくり見てみたくなっただけだ。 


 この世界に来てからは夜空を見上げる事はあまり無かったが、それでも何度かは確実に見た。護衛の時とか。しかし、ちゃんと見たのは初めてかもしれない。視界いっぱいに広がるは満天の星空。夜遅くになっても明かりの絶えない都会で育った俺にとっては初めて見る光景だ。


 視線の先に輝く星々。明りが強いものから弱いものまで……まるで、番号がバラバラの紙ヤスリをゴッチャにしたかのようだ。体を回転させて視線の先を変えたその時、俺の目にとある星座が映った。


──あれは……オリオン座だ──


 線で星同士を結んだら合同な四角形を二つくっつけたような形になるのが特徴(?)の、一等星が二つ入っている、日本では冬を代表する正座のひとつ。


 へぇ~、テレビやプラネタリウムじゃない生の星座って、こんな感じなんだな~。これと同じなのが、あっちの世界でも見られるんだろうなぁ~。


 リアルの星座を見るのが初めてなせいか、俺は『それ』に気付くのが遅れた。


…………ん?


 おかしい……何故『こっち』の世界にそれがある……!? いや、たまたま同じ明るさの星が同じ配置になっているだけだろう……


 星座というのは、ザックリ言ってしまえば『あっち』の世界の地球から見える星々の『それっぽく見える』配置である。


 仮に同じ星の配置を見ているとすると、俺は今地球にいるはずだ。しかし、ここは地球ではない。要するに、地球に『居ない』のに地球『でしか』見られない星空を、俺は今、こうして見ている可能性がある……。


 その後も俺は有名な星座を何個も見つけ、北斗七星とカシオペア座を用いて見つけた北極星らしき星がほとんど移動していない事も発見した。というより、そういう現実を突き付けられた。


 自分がいるこの世界が地球から見てどこにあるのか。周りの星は一体なんなのか。なぜ同じ(?)空が見えるのか。


 わからねぇよ。というか、人類が生存している星が地球以外にもう一つ……いや、それ以上ある事自体がブッ飛んでるのだ。


 なんか今日は新しく知ることが多いな……もう疲れた。帰るか……アキラ達の事だから目覚めたら秒でこっちに向かってくるかもと思っていたが、それはなかったな……。

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