火龍襲来

「マジかよ……何でドラゴンがいるんだよ! しかもこんな所に! 普通誰か気付くだろ! てか……まさか……火龍か?!」


 前に、ダイチのダンジョンを攻略していた際に出会ったレッドドラゴンとは、比べ物にならない程の巨躯、そして身体を包む灼熱の炎……極めつけはあの巨大な火球……間違い無い。あいつは正真正銘火龍だ。皇都の上を旋回してる。しかし、奴からは攻撃を仕掛けてこない……なぜだ?


 眼下に広がる城下町を見ても、火災が起こっているわけでもない。逃げまどう民衆へ炎を浴びせているわけでもないようだ。


「火龍殺るぞ! って魔法が届かねぇ!」

「僕も届かないよ! てか、あのドラゴン、こっち向いてない?」

「ほんまやな……そしてすまん。ワイ火属性やから多分打っても逆効果やわ……。」


 だが、一度こちらに攻撃してきた以上は、もうあいつは完全に敵だ。鑑定がバレたって構いやしない……世界がスローモーションになる……

(鑑定!)


§*★■◆□∋ (▲■〓)

∬≒∵∽∇∇∝⊆⇔⊇⇒ Lv●▲∠

性別 ☆

ステータス

体力 ●%¥@$∝/●%¥@$@

魔力 $◆▲☆#£/$●▲#£¢

筋力 ∀∩〓↑▼∩

敏捷 ∧≫⊃∈∠∀

防御 △▼〒∪▼〒


スキル 『⊇∵★◆≒∝』

・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・


 え? 


 奴のステータスを見たとき、俺は疑問に思った。『強ッ!』とかも思いもしたが、それすら霞む程の疑問だった。


──なんで文字が『?』じゃないんだ?──


 ダイチのダンジョンで出会った、ハッタリの白い巨大なドラゴンを『鑑定』した時の奴のステータスは、確か全て『?』だった。


 だが今回はどうだ……全てが違う。なぜ? 


 仮説は……ダイチのダンジョンの方のは、ダイチがステータスを全部『?』に表示するように設定した。また、単に鑑定が失敗したときの例が、様々な記号に溢れた、あのステータスである……こんなところか。


 そして、様々な記号に溢れているが、体力や魔力を見るに、それぞれの文字には共通の数値があてはまると考えられる。少なくともそれぞれの項目の中では、それが成り立つと思われる。


 ただその場合、またひとつ疑問が浮かぶ。俺達は暮らしの中で無意識に体力を使っている。それは、あの火龍だって例外ではない筈だ。というか、こんな所まで来たのだから、ある程度は消耗しているだろう……。


 しかしどうだ。体力の値は、一の位以外、記号が同じ……つまり値が同じではないか。


 ここから浮かび上がる可能性……こいつは『さっきまで体力が最大だった』……また、『さっきまで移動していなかった』……。


 これらにあてはまる仮説は……『既に上空にいて、何者かが体力を最大にした』か、『体力が最大の状態で転移した』か……って所だろうか……一人の頭脳では限界がある。


 さて、分析したはいいものの、結局勝てるのだろうか……まあ、もしも勝てなくても、死ななければいいか。理想は低く持とう……『水魔法』。

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