容疑

「さて、ほなやりまひょか……よろしくおないしゃす……。」

「よろしくお願いします……。先手は?」

「ちょい待てや……振り駒すっからよ」


 中央の歩を三枚取って、慣れた手付きで両手でシェイクするショウヘイ……経験者か。そして盤上に落とす。表が三枚……結局、俺が先手か。まずは角道開けとくか……。


「そう言えば、皇帝との個人面談はどうだった? あ、機密情報は言わないでよ?」


「まあ、皆察しの通り、勇者になれなれってしつこく言われた。それで、勇者になったら第三皇女と婚約させてやるとも言われた。まあ勿論断ったがな。」


「あ~そいつは災難だったな。まあ、それを聞く限りあっちからはもう言ってこなさそうだし、行った意味はあったんじゃねぇか?」


「うんうん。そしてその流れ弾が僕達に届く可能性があるっていうね……。いやソウタに勇者になれって言ってるわけじゃないよ?」


「まあ、仮にそないになったとしても、断ればええやんけ。ひたすら断るって言っとけばどないかはなるはずや。」


 気付けば棒銀で攻められており、こちらは仕方なく中飛車をやめて相飛車にする。


 さて、『あれ』を言うかどうしようか……まあ、彼等に流れ弾が当たった時の為にも、言っておこうか……。


「皆……俺がこれから大切な事を話す。皆が呼び出しを食らった時の為に言っておくぞ。俺が断り続けたら、第三皇女が部屋に入ってきたんだ。」


 真剣な彼等の顔を見て、ゆっくりと話を続ける。


「それで、勇者になったら婚約させてやると言われ、それでも俺は断ったわけだ。」


「問題はそこからなんだな?」


「そうだ。そしたら皇帝が第三皇女に目配せをしたんだ……俺はつられて彼女の方を見ると。視線が合ったんだ……」


「ちょっと待て……お前のラブストーリーは俺達は求めてないし、多分需要無いぜ?」

「目と目が合う……流れ的にラブコメ一直線だよねぇ~。リア充求めてホニャラララ。」

「あ、リア充帰ってもろて?」


 お前ら……リア充をそこまで敵視すんなよ……辛辣過ぎんか? リア充は世界を救うんだぞ?


「話を最後まで聞いてくれ。そしたら、彼女の目が紫に光ったんだ……俺はなんとも感じなかったんだが、平気な俺を見て、あっちは凄く怖がってたんだ。俺の予想だが、催眠か何かの魔法を掛けようとさせられた可能性がある。」


「へぇ、目を合わせて発動する魔法か……幸いソウタが掛かってないようでなによりだがよ……俺達の場合は大丈夫じゃねぇかもしれねぇな。」


「うん。ソウタがあまりにも格上過ぎたから掛からなかったって仮定すると、僕らは結構危ない線にいる可能性が高いんだよね。」


「せやけど、呼び出されちまったらどうしようもないで? 逃げたら下手すりゃ指名手配犯やぞ? まあ警察はおらへんと思うけど。ていうか、何で異世界人に拘るんやろ?」


「それを皇帝に聞いたんだが、教えてはくれなかった。裏アリかもな……って、」


 ヤバい、飛車も取られた。まずい。押し切られる……ッ!


「なあ、今どんな気持ちや? 飛車と角両方とられて翼を無くしたソウタさんや……?」


 ショウヘイの顔がウゼぇ……とその時、窓の外が見えた……迫ってきていた……


 巨大な火球が………………

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