引っ掛かり

────

──「おいソウタ。さっきの話の続きをしようぜ。」


 部屋に戻って、ソファーに寝転がっているアキラが言った。ベッドで寝転がらないんだな……。


「そうだな……俺のこの茶色の防具は、今から約千年前に作られた、大賢者ジグラが着用していた鎧なんだ。」


「千年前? なあ、ちょっと待て。大賢者はいつ邪神と戦ったんだ?」


「そこなんだよ。ケイタの話によると、邪神と正規の神々は何千年も前に交戦し、そこで邪神が敗れてどこかに封印されたらしいが、それだと、大賢者が邪神といつどこで戦ったのかがわからないんだ。」


「確かにな……いや待てよ? 大賢者は正規の神々と邪神が交戦する『その前に』邪神と戦って、『かつ生存してた』んじゃないのか? そして今から約千年前にその鎧を作って、着用していた……これなら、矛盾は生まれないはずだぜ?」


「なるほどな。確かにそれなら矛盾は生まれない……な。まあ、民衆が信じてるあたり、最初から矛盾なんて無かったのか……。」


「まあ、お前のその防具が、事をややこしくしただけなんじゃねぇの? つーか、何でお前が大賢者ジグラが作って装備していた防具を持ってるんだ? お前まさか、タイマンでボコして強奪したのか……?」


「いや違う。ゴブリンの財宝庫の中にあったんだ。まあ、大賢者ジグラとタイマンしたのも彼に勝ったのも事実だが、決して強奪したわけじゃない。」


「今お前さらっと言ったけど、人類最高戦力と戦って勝ったっていう自覚ある?」


「いや、まあ……あるぞ? 一つ一つの魔法の威力がえげつなかった。俺が勝ったのも、彼の切り札の魔法の爆発に巻き込んだおかげだからな……。」


「それは良かった。無自覚チートほど、恐ろしいものは無いからな……って、大賢者ってどれくらいの年月を生きてんだろな……。」


「何千年前も前の戦いに参加し、現在まで生きている程だ。下手したら一万年もあり得るぞ。まあ、何で今まで生きてこれているのは知らないがな。」


「一万年か……まあ、人がそんだけの間生存するのはほぼ不可能だ。何かあるとすれば、クスリや魔法で老化を食い止めたり体を治癒したり……って所じゃないか? エリクサーとかエクストラヒールとかは、ファンタジーの常連だぜ?」


「エリクサー、エクストラヒール……な。俺は聞いた事が無いが、民衆は知ってるんだろうな……。でも、それで一万年ももつか?」


「まあ、当の本人は既に死んでいて、何者かが彼に成りすましてる……なんて事もあるかも知れねぇが、そんなに彼が強いって事は、本人なんだろうな。……てかもうこんな時間じゃねぇか。俺はもう寝るぜ。お休み~。」


 そう言ってアキラはソファーから降りて、ベッドに横になった。偽物か……さすがにそれは無いな……。


「お休み~。」

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