真偽

「世界のどこかに邪神が封印されてんのか。そいつは見つけるのに気の遠くなりそうな時間がかかりそうだな。ソウタ、もう一杯頼むぜ。」


 アキラが難しい顔をして、俺に空になったグラスを突き出しながら言った。


「お前、こういう時にトイレ行くのはあまり良くないことは先生から教えてもらったから知ってるよな? まあ、自己責任でな……『水魔法』。ケイタ達も飲むか? グラスならあっちに置いてあるぞ。」


 アキラのグラスに水を入れながら、二人に向かって言うと、彼らは互いに顔を見合わせた。


「……じゃあ、頂く事にするよ。」

「ワイもそうさせてもらうで。」


 そう言って、グラスを取りに行った二人。この場所は、俺とアキラのみとなった。


「なあ、アキラ。さっきの邪神の話、本当だと思うか?」


「え? 逆にソウタは、あの二人の話が嘘だと思うのか? 情報共有の際、あっちが得をしたかもしれないのに、『フェアじゃない』と言って突っぱねた程だぞ? お前の過去に何があったかは知らねぇが、人を信じた方が良いぜ?」


「いや、それはそうなんだ。だがな……お前は大賢者ジグラを知っているか?」


「ああ、知ってるぜ。人類最高戦力であり、邪神と戦って敗れた人だろ?」


「そうだ。そして、俺のこの防具は、今から約千年前に作られ、大賢者ジグラが装備していた防具なんだ……って、二人が帰ってきたからこの話はまた後でな…………じゃあ、グラスを出してくれ……『水魔法』。」


「ありがとう……ン……ン……凄く美味しいよこの水! 消毒薬の味とか全くしないし、硬水みたいな感じでも無いね。魔法で出した水って、こんなに美味しいんだ……。」


「……美味っ! こないな水今までに飲んだことないわ!」


「ありがとな……まあ、誉められたのは俺じゃなくて水だけど……て、そろそろ食事……というか集まりの時間が終わるな……俺達の国の代表達も帰り始めてるし、そろそろ戻るか?」


 いつの間にか、会場は数十分前のような混み具合にはなっていなくなっていた。皇帝一家はまだ残っているが、あの列が無くなるのはもうすぐだろう。


「そうしようぜ。」

「そうだね。」

「せやな。夜遅うまで起きとるんは体に悪いけんな。あ、言うん忘れとったけど、ワイら二人は明日御前試合するけん、暇やったら見に来てな~。」


「え? お前らも御前試合をするのか!?」

「奇遇だな。俺達も明日、御前試合があるんだ。俺達の相手は勇者パーティーの副リーダー二人なんだが、そっちはどうなんだ?」


「僕はショウヘイと、ショウヘイは僕と戦うよ。ようするに、味方同士で戦うって事。『今日の味方は明日の敵』ってやつだね。」

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