第三皇女
光に照らされたのは、白を基調としたドレスに身を包んだ、腰まで届くほどの長さの、銀髪の少女だった。白い肌に整った顔立ち、そして佇まい………………世の中の人々は、きっとこう言うだろう。
──美少女──と
俺は今まで、『美少女』など、架空の世界の中でだけの存在だと思っていた。現実には存在するはずがない……と……。でも、十数メートル程離れた場所にいるのは、紛れもない『美少女』だ。
さっきまでヒソヒソと聞こえていた誰かの言葉まで無くなり、辺りは水を打ったように静まりかえった。
「クラギス帝国第三皇女、リーシャ・シャルルド・クラギスと言います。」
透き通るような美しい声が、俺の鼓膜を震わす。なるほどな……ゾボロさんが絶世の美女とまで言っていたのも、あれを見れば頷ける。
そんな彼女が、あの勇者(笑)と婚約しているのだから驚きだ。勇者って実はそれなりに強かったりするのだろうか……そうで無ければ、婚約した理由がわからない。
単なる愛? そうだとしたら……アイツのどこが良いんだ? ……っていや、俺が実際に見てる部分だけで内面まで決めつけるのも良くはないか……。
そして、そのまま静寂の時が流れていく。誰もが息を呑んだであろう、その空間。その中に、新たな光が生まれた。
照らされたのは、金を豪華にあしらった、黒髪黒目のイケメンの青年……そう、彼こそ勇者ヤソラ(自称)である。
「俺は彼女の婚約者で、クラギス帝国の光の勇者の、ヤソラ タツだ。」
まあ、奴が来ることも、何となくは予想していたが……何だろう、彼以外の全員が銀髪だからか、凄い目立つ。
てか、さっきアイツ、『クラギス帝国の光の勇者~』とか言ってたよな……勇者って、国家に所属してるのか? そして、闇の勇者とかもいるのか?
国家に所属してるとしたら……って、皇女と婚約してるんだからそうなるか……ただ、もしも『クラギス帝国の』勇者だとするならば、『〇〇国の』勇者とかもいたりするのだろうか?
でも、それだと世界に何人も勇者が存在するわけだよな……まあ、それはそれでアリか……。どの国も戦力として勇者を持ちたいのだろう……。
一瞬、彼と目があった。愛想笑いを張り付けていた彼だったが、その一瞬だけ、怒りの表情になっていたのを俺は見逃さなかった。
元はお前の方が悪いと思うぞ~~。
────
──そして彼の紹介を最後に、場は交流の場へと変わった。おっさん達が列をなし、皇帝一家に挨拶をする流れが出来ていた。
「さて、俺達の情報交換を再開するとしようか。」
「そうしようぜ。」
「賛成。」
「せやな。」
「じゃあ、勇者パーティーについて知ってる情報を共有するか。」
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