御披露目

 俺達四人は、その場で唸った。三人よれば文殊の知恵……とかいうが、神の考えている事は、俺達人間が何人集まったところで到底分かるものではないだろう。


 そのまま誰も話さない時間が過ぎていき、気まずい空間が出来上がりかけた時、部屋の明かりが突然消えた。辺りが闇に呑まれると共に、おっさん達のどよめきが広がる。


「襲撃か!?」

「俺達の出番が来ちまったか……。来ない事を心の奥深くで願ってたのによ……命大事にな!」

「ケイタ、おるさかいか!?」

「いるよ!」


 俺はポケットに入れていた『ジグラの鎧』を装備して、臨戦態勢をとった。闇に包まれた中では、周りの様子など録にわかりやしない。その途端、どよめきが消え去った。どこで、何が起きている……!


 そして非常事態であるであろうにも関わらず、おっさん達がまたさっきまでと同じように話を再開しだした。彼らの顔は見えないが、きっと余裕たっぷりの表情なのだろう。


 どういう事だ? 何かのパフォーマンスの一環なのか? そのまま辺りに気を配ること体感で数秒……


『おおっ!』


おっさん達の声が急に大きくなった。というか元がでかいんだよな……。


「何だ? 襲撃じゃないのか?」

「誰か殺られたのか!?」

「気ぃ付けいや! 何が起きとるかわからんぞ!」

「皆、多分これ襲撃じゃないよ!」


 視線を移すと、そこには照明に照らされ、高い場所から俺達を見下ろしている、豪奢な服に身を包んだ一人の老人がいた。


 辺りに満ちていた話し声は、いつの間にか消え去っており、しばらくの静寂に包まれた。老人が口を開く。


「余は、クラギス帝国皇帝、アルド・シャルルド・クラギスである。皆、今日はよく集まってくれた。…………」


 そのまま長々と、彼の話が続く。しかし、前の世界で通っていた学校の校長先生の話のような、『暇』や『だるい』と感じる事は無かった。これが皇帝パワーというやつか。


 アキラ達を見たが、全員が皇帝の方を向いて真剣な表情でいる。何か魔法でも掛けられてるんじゃないか?……いやまあそれは無いか。


 再度皇帝の方に視線を移すと、『ダン』という音と共に、俺達から見て皇帝の左側に、これまたキラキラと輝く服を纏った男が現れた……というか照明に照らされた、と言うべきだろうか。


「クラギス帝国皇太子のザルド・シャルルド・クラギスだ。………………」


 皇太子……あ、多分ここから皇帝ファミリーの紹介……というか御披露目が続くんだろうな……。


────

──案の定その後も続き、俺が飽き飽きしていた時、光の本に、目を疑うほどの美少女が現れた。

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