道中

 ゾボロからの説明でわかった事だが、今回の護衛は俺達と城の騎士団を含めて五十人で行うらしい。冒険者と騎士団で揉め事が無ければいいのだが……。


 護衛の対象はこの国の王様ご本人と、側近二人だ。本人まで遠方に行くのは中々危険なのでは? ……とも思ったが、『その危険から護るために護衛がいる』というゾボロからの言葉を受けてなぜか納得した。


 俺とアキラは、王が乗る馬車の斜め右下側の一番外側を歩くらしい。一番外側なのは、魔物討伐の腕をかわれたからか、内側の騎士達からも外側が見えるようにするためなのかは知らないが、まあ、頑張るか……。


 ゾボロからの説明を終え、俺達二人を含めた三十人の冒険者で列をつくって、王城へ向かう。


「めっちゃ通行人に見られてるな……まあ、有名人達がいるわけだから、そりゃそうなるか……って、なんで最初から王城に集合じゃないんだ?」


 列の最後尾にいるアキラが、ひとつ前の俺に問いかける。


「多分、王城に集合すると、ギルドの職員の人達による、出席……みたいなやつの確認がやりにくいからじゃないか? それにゾボロが大声を出しにくいのもあるだろうし、王城に入れる人数は最低限にしたいっていうのもあるかもしれないしな。」


「なるほどな……。なあ、俺達以外って全員大人じゃね? なんか絡まれそうな気がするんだが……テンプレってヤツ?」


 アキラの言う通り、見える範囲で俺達以外の未成年はいなさそうだ。まあ、この世界の成人の基準は知らないが……確かに絡まれそうだが、それは対策済みだ。


「そうなりにくいように、訓練場から出る時に、列の最後尾で歩くよう、お前に提案したんだ。橫入りなどによるトラブルはよくある事だからな。」


 そう、俺はアキラに列の最後尾にいるように提案していたのだ。後ろからちょっかいを掛けられる事も無いし、橫入りも中々起きない。最後尾はある意味一番良い所でもあると俺は考えている。


「そういえば、御前試合の事だがよ、ソウタはどうする予定なんだ? 勝ったら勝ったで勧誘されるし、負けたら負けたで悔しいし、どっちも得が無いぞ?」


「それは……正直、まだどうしようか迷ってる。今考えている選択肢は三つあるんだが、どれもリスクが高い。」


「それで、その選択肢は何なんだ?」


「一つは、御前試合そのものを放棄する事。これは勧誘を避けるのには良いが、罪人扱いされる可能性が高い。一生暮らせるくらいの金は貯まってるけど、罪人になれば使える所が無くなるだろうな。」


「まあ、お前がそれで罪人になっても、朝晩の飯くらいは持ってきてやるよ。俺はボッチ兼かませ犬として散ってくるさ……。」


「お前、結構良い奴なんだな……」


「別に悪い奴であろうとしてるわけじゃ無いからな……それで、二つ目は?」

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