依頼

「どういう事だ?何でお前のせいなんだ?」


「いや、そのな?……ワシ、一ヶ月前くらいにここに引っ越したんじゃけど、魔道具が発動するまでに、ちょっと魔物がよってたかってきてな?……ワシ、ちょっと腹がたって、でかいの一発かましてやったんじゃ。そしたら、あいつら逃げて行ってな?もしかしたら……そっちに行ったかも……」


「…………言いたいことはわかった。さて、言うことがあるんじゃないか?俺じゃなくて、迷惑被った皆に。」


「……その通りじゃ……」


「わかった様で何よりだ。よし、今から謝りに行くぞ。これは義務だ。命令ではないぞ。俺に付いてこい。ドバンの町まで案内してやる。」


「助かる。ソウタって、もしかして意外といいヤツ?」


「余計な一言を入れるな。」


────

──「……それで、この男がスタンピードの原因をつくったのか?」


「そうだ、ガレアス。あの魔の森の深いところに住んでいる。ほら、言うんだ。」


「ワシはジグラというものです。ソウタの言う通り、魔の森の深いところで暮らしております。この度はスタンピードの原因をつくり、皆様に多大なるご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ありませんでした。」


「冒険者ギルド、ドバン支部のギルドマスターのガレアス、君の謝罪を受け入れた。故意ではなく、今回は死者も重傷者も出なかったから、そこまでひどい罰は与えん。よって、まずは君に外壁の補修の強制労働の罰を与える。」


「ガレアス、えらく軽くないか?」


「だから『まず』って言ったんだ。それからも強制労働を何度も言い渡すつもりだ。それに罪人一人まともに裁く暇があるなら、この町の住人達を守る努力をした方が良いだろ?」


「わかりました。このジグラ、身を粉にして働かせて頂きます。」


────

──その後、ジグラさんは簡単な説明を受けた後、憲兵達によってどこかに連れていかれた。


「さて、俺からの質問だ。ソウタ、この球に手を置いてくれ。」


「だろうな…………置いたぞ。質問は?」


「あのジグラという男は、まさか大賢者ジグラ様なのか?」


 顔が怖いですよ。ガレアスさん。


「そうだ。大賢者ジグラで間違いはないだろう。危険地帯の魔の森の、しかも深いところに住み、そこにいる魔物達を魔法一発で逃げ出させた。一回戦ったが、彼が使った魔法は全部が非常に高い威力を持っていた。おそらく本物だろう。」


 事実、俺と彼が戦った所は地面がえぐれまくっていた。まあ彼の魔道具で無かったことにしたがな。さすが大賢者。


 球はもちろん青く光る。


「君とんでもないことやったんだな…………というか、それの影響でまたスタンピードが起きたりはしないんだろうな?」


「多分無い。魔物が寄り付かないように魔道具を使ったからな。」


「そうか……俺はまた、王都まで報告に行かないといけないのか……行きたくねぇ……。大賢者様は正体が皆にばれると雲隠れしてしまうかもしれないから慎重に対応する必要があるし、かといって上に隠すわけにもいかないし……」


「大賢者ジグラに敬語を使わなかったとかで困ってるんじゃないんだな。」


「そりゃあ、いくら大賢者様でも、今は一人の罪人だからな……ああ、行きたくねぇ。」


「頑張って行ってこい。ところで、魔の森の間引きはほとんど済んだんだが、もう終わらせるか?」


「それはもう止めてくれ。あまり狩り過ぎると、生態系に悪影響が出るからな。依頼完了で暇になった……そんな君に、王都のギルドから依頼が来ている。」

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