突発的

『2626』


 目の前の老人から告げられたレベルに、俺は驚いた。思ったより低いぞ?ええと、俺のレベルは…………

(鑑定)


ヒューマン Lv2579


 大体50くらい違うのか。てっきり3000とか4000とかあるのかと思ってたけど、意外だな。


 もしかしたらこの50の差が、天と地ほどの差なのかも知れないが。


 でも、これでは邪神には勝てないんだな。


「どうした?ワシのレベルのあまりの高さに固まってしまったのか?」


「いや……あのぅ……俺、レベル2579なんですよね……」


「は?……………………小僧、ワシと戦え。殺す気でこい。安心しろ。ここの領域内で起きたことを無かったことに出来るよう、そして人や魔物が寄り付かないよう、魔道具も起動させた。」


「は?いや展開急過ぎません!?」


 つい言葉が丁寧になってしまった。


「いくぞ小僧!」


 彼は水で出来た巨大な五体の龍を、こちらへ飛ばしてきた。


 俺はそれを避けながら、彼の周りを円を描くように走る。龍が当たった所がどうなっているか、見ている暇は無さそうだ。


 彼の首に『断ち水』を生成して、彼の首を切断したはずだが、落ちもしないし倒れもしない。飛んでくるのはカラフルな龍達。


 彼の命中率を下げるため『目潰し』も使ったのだが、今一効果が無い。


「そんなチャチなモンはワシには効かんぞ!」


 高い空に浮いている彼が片手を上に上げると、幾つもの色が合わさった玉が形成されていく。


 それは少しずつ大きくなり、俺が龍達を避けている間に、直径が彼の身長くらいになっていた。『酸弾』を食らわせても全く動じない。


「ワシの研究の集大成をとくと味わうがいい!くらえ、『カオスマジック』!」


 その玉を地面に当てて爆発させ、地面で走っている俺を殺ろうとしているのだろうか。

見た目であれはヤバイやつだとわかる。当たれば死ぬだろう。


 高く飛んで避けた方が良いのかもしれないが、あれは上手くこちらの攻撃に使いたい。


 だから彼が手を振り下ろした瞬間、彼の周りに、見えづらい球体の水の板を生成した。魔力で形を固定して、かなり抜かれ難くなった、俺特製の防御壁の別の使い道。


 玉がそれに当たって、水の球の内側で、彼を巻き込んで爆発する。


「────────」


 彼から見れば、玉が何もないところで爆発したように見えるだろう。煙の中の彼の顔はどうなっているだろうか。


 取り敢えず水の球を解除して、落ちていく彼に『酸弾』を打ちまくっておく。


 爆風は水の板で遮断されたから俺は無傷だ。水は圧力ではほとんど体積が変わらないと、理科の実験で思い知ったのがここで役に立ったようだ。


 水の板で自分を囲いながら、俺は落下した彼を探した。


────

──意外と早く見つかった。彼は地面にうつ伏せになっている。 木の枝でツンツンすると 、


「ワシの負けじゃ。」

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