正しい水魔法の使い方
waissu
チュートリアルダンジョン編
突然の別れ
目を開けると、知らないところだった。
おかしい、俺は家で寝ていたはずだ。
白い部屋の中に、自分を含めた大勢の人々がいる。
彼らの表情には、驚き、悲しみ、喜び
などが浮かんでいるようにみえる。
夢だろうか。いや、夢であってくれ。
頬をかくと、ニキビのある部分が「ガリッ」と音をたてて削がれ、僅かな痛みがはしった。かいた指を近付けると、今までに何度も見た赤い液体が僅かに付いているのが見えた。鼻をくすぐる鉄の匂い。
夢でないことを、理解させられた。
『皆さん。まずは勝手にここに喚び出したことに謝罪いたします。私は、皆さんでいうところの神というものです。』
どよめきが聞こえてくる。
神か。えっ、神?ガチ?どこにもいない。
まあ、本物であればこんなことをするのも容易いことだろう。その後の長ったらしい説明を要約すると、
・邪神を倒して。
・俺たちを異世界へと送り込む。
・向こうの世界では誰もがスキルを持っていて、魔法も珍しくない。
・魔物を倒せば、経験値がたまっていって、レベルが上がり、身体能力が上がる。
・スキルは使えば使うほどスキルレベルが上がり、より強力になる。スキルレベルの上限は全て10である。
・自分の情報を確認したいときは、強くそう念じることで、確認できる。
・すぐ死なれたら困るので、スキルを授けた後、死んでも生き返るチュートリアルダンジョンへ送り込む。
・ダンジョンの難易度と、ソロかマルチかは一人一人が選択できる。難易度が高く、階層が下であるほど魔物も強くなるが、そのぶんレベルがたくさん上がるため、自信のある人はより高い難易度を選択してほしい。
・最深部のコアや宝箱、密室のボス部屋は存在せず、階層には限りがある。
・ダンジョン内の魔物は何のアイテムもドロップしない。
・チュートリアルダンジョンを出たい人は、強くそう念じることで、向こうの世界の町の近くへ転移できる。
そして、
・邪神が死んでも帰還できない。
顔から血が引いていくのがわかった。
嫌だ、帰りたい。
異世界転移は架空の中だけで十分だ。
まだやりたいことがあるのに。やり残したことがあるのに。何でだよ。何で俺が。
目もとが熱い。
でも無理なのだろう。
せめて最後に親の顔が見たかった。
ごめん父さん。ごめん母さん。ごめん。
生意気な息子でごめんなさい。迷惑かけてごめんなさい。
だからせめて最後の親孝行をします。
貴方達より後に死ねるように、生き延びます。
────
───
──
─
生きるために、知恵をめぐらそう。
自分が冷静になっていくのがわかった。
ピコーン
〈スキル『水魔法』を取得しました〉
〈スキル『鑑定』を取得しました〉
これか。『水魔法』ってそんなに強いのか?『鑑定』は結構凄そうだけど。他にスキルはあるのか?
(でてこい)
ピシュン
でたでた。どれどれ?
タキガワ ソウタ
Lv1
スキル 水魔法 Lv1 鑑定 Lv10
この二つだけか。鑑定がLv10なのはありがたい。というか情報少ないな。いや待てよ、自分自身を『鑑定』すればもっと詳しくなるのか?あ、でもまだ使い方わかんないや。
俺は主に『水魔法』で戦っていかないといけないみたいだ。多分水は出せるのだろうが、水をかけたところで魔物は倒せないだろう。え、じゃあ俺どうすれば倒せるの?
考えた結果、一つの結論に至った。そして神に質問した。
「すいませーん!魔物は俺たちと同じようにに、生きるために食事をしたり、呼吸をしたりしていますか?」
人々の視線が一瞬で集まった。
『はい、その通りです。ほとんどの魔物は、食事や呼吸をしなければ生きていけません。』
ほとんどの魔物っていってるあたり、例外もいるんだろうが、これはでかい。これなら、条件さえ揃えば俺でも魔物を倒せるかもしれない。
ピシュン
「うわっ!」
タッチパネルみたいなやつが出てきた。
『ダンジョンの難易度を選択してください』
・簡単
・普通
・難しい(マルチ推奨)
・地獄(マルチ推奨)
・極(マルチ推奨)
『ソロかマルチか選択してください
マルチの場合、マルチを選んだ人たちの中の同じ難易度を選んだ人たちと同じダンジョンに転送します
回復系など、戦闘向きではない人におすすめです』
・ソロ
・マルチ
俺の回答は
難易度
・極
・ソロ
回答を送信した途端、意識がなくなった。
俺は石造りの大きな部屋に寝転がっていた。体を起こして辺りを見回すと、下に続く階段と、青い泉があった。
『階段を降りた先には魔物がいます。魔物たちはここには来れません。このダンジョンの中では水や食べ物を食べなくても、何ら問題ありません。また、傷を負ったときは青い泉の水を一口飲めば、どんな怪我もたちまち治ります。まずは魔物と戦ってみましょう。スキルは、スキル名を発声するか強く念じることで発動します。』
新情報あざす。ここはセーフティーゾーンなわけか。泉はエリクサーみたいなものか。
泉に映ったのは、黒髪黒目の、いつも洗面台で見かけた俺の顔だ。どうやら顔は変わっていないようだ。
おそらく階段を降りれば魔物がいるのだろう。しかし俺にはやりたいことがある。
俺は泉に映った自分に『鑑定』をかけた。
タキガワ ソウタ(17)
ヒューマン Lv1
性別 ♂
ステータス
体力 100/100
魔力 100/100
筋力 100
敏捷 100
防御 100
スキル 水魔法 Lv1
魔力を用いて、水を生み出したり、操作したりできる。レベルが上がるほど、同じ魔力でより多くの水をより短時間に生成できるようになり、操作可能時間が長くなる。また水質や水温も変化させることができ、生成した水は、魔力を使わずに消すことができる。
鑑定 Lv10
物や人、魔物などの詳しい情報を知ることができる。レベルが上がるほど、知ることができる情報が増える。
へえ、名前の横の数字は年齢かな。
ステータスは……基準が分からん。
スキルのテキストは消えるのかな……おっ、消えた。
ステータスだけ表示させるとかは……できたな。
どうやら、表示についての細かい指定は可能なようだ。
さて、使ってみますか。手のひらを突きだして、
「水魔法。」
ピュー
手のひらから水が出てきた。って少なっ!
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