-51- 「訪問客」

 うちの家の玄関は、扉にすりガラスを使っていて、玄関先に誰かが来ると、ぼやっと見える。


 けれど、すりガラスだから、どんな人が来たのかはっきり見えない。


 時々、誰かが玄関に来て、「ごめん下さ-い。水鏡さん、水鏡太一さんはいますか-?」と、何だか間延びした声で、おじいちゃんの名前を呼ぶ。


 すりガラス越しに、玄関の前に居るのははっきり見えるのに、扉を開けると誰もいない。


 おじいちゃんにその事を伝えると「来ても放っておけ。わし以外の人間には、悪さはせんはずじゃが、だからと言って、お前が相手をしてやる義理もないわ」と言った。

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