-26- 「*****(伏字)」

 学校の掃除の時間、黒板に黒板消しを掛けていると、黒板の隅に小さく『*****(伏字)』と書かれているのに気が付いた。


 知らない言葉だった。


「*****(伏字)?」


 僕は、書かれている言葉を、何の気なしに読み上げてしまった。


 すると、僕の口から、黒いモヤっとしたモノが出てきた。


 よく分からないけれど、それは何だか凄く嫌な、善くないモノの様に思えた。


 その時は何が何だか全く分からなかったけれど、今思えば多分、『*****(伏字)』は口に出してはいけない、呪いの禁止ワードみたいなモノだったんだと思う。


 そのモヤみたいなモノは、煙が風に吹かれる様に、すーっと漂って教室の外に出て行った。


 僕が出したモヤだけで、とんでもない事が起きるとは思えない。


 けれど、沢山の人があの言葉を口にして、たくさんのモヤが集まったら、きっと、とても善くない事が起こるに違いない。


 僕ではなく森崎君あたりが見つけていたら、どう言う意味か気になって聞いて回り、きっと学校中の噂になって、大量のモヤが生まれたに違いない。


 僕は黒板に書かれた『*****(伏字)』の文字を消した。


 黒板に書いたのは、誰?

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