-25- 「手形」

 森崎君の家に遊びに行った時、彼の部屋の窓に、手形の跡が付いているのに気が付いた。


 窓の外側に両手の跡がべったり付いていて、よく見ると、手形の少し上に何かの丸い跡も付いている。


 更に注意深く見てみると、この跡が一番新しくてはっきり付いているけれど、他にも同じ様な跡が幾つもあった。


「森崎君、夜は、窓のカーテン閉めた方が良いと思うよ」


 僕は森崎君に忠告する。


「何で? 面倒だからやだよ」


 一蹴された。


 夜、ナニかが窓の外から、この部屋を覗いている様を想像した。


 窓にべったり両手を付いて、おでこを窓に擦り付ける程に顔を近付けて、布団で寝ている森崎君を見下ろしたら、丁度こんな跡が付くだろう。


 けどまあ、きっとそいつは森崎君に手出し出来ない。


 だからこそ、何度もこの部屋を覗いていたんだろう。

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