-18- 「異夢」

 何だかガヤガヤとうるさいので、目を覚ますと、デパートの様な場所のベンチに座っていた。


 照明は明るいのに、何だか暗い。


 眠る前の記憶を辿ると、夜、家の布団で普通に寝たはずだ。


 周りを見ると、ぱっと見普通のデパートに見えるけど、どこか違和感がある。


 店内にかかっているBGMが、キィキィとガラスを引っ掻いた様な音楽には聞こえない雑音だ。


 お客さん達が喋る言葉は、日本語どころか人間の言葉に聞こえない。


 洋服売り場の横で、豚の解体ショーみたいな事をやっていて、鳴き声が哀れで聞いていられない。


 ペットショップで、人間が人間を売り買いしてる。


 他にも違和感だらけだけど、一々確認してたらキリがない。


 これは夢か、それとも知らないうちに異界に迷い込んだか、いずれにしろまともじゃない。


 うろうろ歩いているうちに迷ってしまい、元のベンチにも辿り着けず、お腹が空いてきて途方に暮れた。


 子どもにキャンディを配っていたピエロが、僕にも一つ手渡した。


 一見、普通のキャンディに見えるけれど、口にする気にはなれなかった。


 外への出口を見つけたので、出てみると、外は、何というか、真っ暗ではなく明るいのに、真っ黒だった。


 黒い太陽が、黒い日光で世界を黒く照らしている様だった。


「君、もしかして、迷子かな?」


 呆然と空を見上げていると、お巡りさんに似た格好をした人が、声をかけてきた。


 この世界で初めて聞いた、僕の知ってる普通の言葉だ。


「ダメだよ、こんな所に来ちゃ。早く帰りなさい」


 そう言って、お巡りさんは僕の手首を掴んで、ぐいっと引っ張った。


 と、そこで急に目が覚めた。


 僕は家の布団に寝ていて、やっぱり夢だった様だ。


 布団から起きあがろうとすると、自分が何かを手に持っている事に気づいた。


 キャンディだったので、少し迷ってからゴミ箱に放り込んだ。

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