湿度の街 ーお天気の街・2ー
あおいひなた
第1話 草稿(twitter発表版)
妹が
よその街から帰ってきた
行商に行くから、と
隊商についていったのがひと月前
連絡のないのがいい知らせと嘯きながら1人で待ち続けていた
街境まで迎えに出ると
境を超えてすぐ、妹は倒れてしまった
それまではとても元気に歩いていたらしいのに
「境を超えた途端、体が重くなった」と途切れ途切れに言うと
気を失うように眠りこみ、眠り続ける
家に寝息と静けさが響く
起きる気配がないからと、医者が妹にたくさんの管をつないでいった
「初心者には多いんだ」
隊長が言っていた
「湿度の差に耐えられないんだ」
信じられない話だが
街境を一歩超えると、空には雲が垂れ込めてないらしい
空の色は青く雲の色も白く、太陽が輝くのだと
「絵本では見たけど、おとぎ話の中だけかと思ってました」
晴れの地域から見ると、この街も晴れているように見えるそうだ
こちらの街から空を見ると
どこまでも黒い雲が続く
「目覚めますように」
そう言葉を残すと隊長は隊に戻って行った
「晴れは、準備してあげられないなぁ」
眠り続ける妹を見ながら呟く
いつまで眠るんだろうね
絵本で見た事のある「青空」を思い出す
あんな光景があるなんて
色んな思いが噴き出す
色の着いた風景
どんなにまぶしいのだろう
妹は
起き上がれるようになったらまた
街の外に出るのだろう
もう、帰ってこないかもしれない
目覚めますように
目覚めませんように
相反する思いが渦巻く
私も出たい
私は出たくない
相反する気持ちに揺れる
眠る妹の夢は
この街の風景か
外の街の風景なのかは
わからない
どんよりとした空の下
私の心には
小さなつむじ風がグルグルと
消えないでいつまでも
吹いている
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます