傘の話 ーお天気の街・1ー

あおいひなた

第1話 草稿(twitter発表版)

この街では子供が生まれた時に「相棒」が決まる。

相棒とは 傘。

子供の成長と共に傘も成長し、見合った大きさで一生を共にする。

親が選ぶのではなく

その子自身がどこからともなく選んでくる。

この街には傘職人など居ないのに。


雨の降らない時、その傘はどこに居るのかわからないけれど、雨が降り始めるとその子の手に握られる。まるで体の一部でもあるかのように。


あまりにもその街ではありふれたことなので、殆どのものはそれを当然のことと受け止めるが、不思議に思う者もいて、せめて傘の由来を、と研究するものの

結局わからないまま頓挫してしまう。


相棒である傘が泣くのだ。


「わからないと、信じられない?」と毎夜夢に出てこられた研究者の話も多い。


「まるで守護霊のようだ」と例えた研究者がいた。

雨や風から相棒を守る。いつも傍にいる、守護者。

夢に出て助言する時すらあるらしい。


そして、その人が生を終えるとき、だれが建てた訳でもないのに、その墓の上にはその傘が開いて、今度は墓を相棒として守るようにさされている。

その街にはそんな墓がたくさんあった。

しとしとと降る雨の中、傘を指した墓の並ぶ墓所に今日も1人、太陽を見たことの無い者が埋葬された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

傘の話 ーお天気の街・1ー あおいひなた @aoihinata165

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ