とある街道の、シャレにならない話。
藤咲 みつき
第1話 バス停
街道
作者 藤咲 みつき
私のT県にはとある街道がある。
入り口から左右に木々が生い茂り、市をまたいで山奥まで続く街道で、世界文化遺産なところにも通じる場所で、その道は数百年永遠つかわれ続けた古い街道だった。
そんな街道でおきた出来事の数々を、私の体験談を含めて、話していこうと思う。
バス停
私は、数日前からとある街道のわきにそれた先にある教習所に通っていた。
私は一般に皆がとる18歳を大幅にすぎ、26歳になり、やっと教習所に通う決意をした。
なぜ今更?
そう思う人も多いだろうが、現代の日本は車の免許所を持っていないだけで、さげすまされたり(え、車の免許ぐらい撮りなよ。とらないとかありえない。免許ないとかありえないよねぇ)などなど、ともかく我が県は車の免許ない=ありえない+悪党。ぐらいの勢いでぼろくそに言われるので、父の死後、何かあったときにヤバいかなぁという事もあり、とることを決意した。
正直、なぜその街道の教習所にしたのかと言うと、一番まともに運転技術を教えていただける場所だったからだ。
当時、その時にはその街道がヤバいという事は、よく知っていた。
というのも、等間隔にお地蔵さんが並び、街道の終着まで続いていたこと。
昼間の大変明るく、日が照っている時間にもかかわらず、左右から生い茂る木々が光を遮り、とても暗く感じる事。
さらに言ってしまえば、木々の葉がないはずの冬ですら、直感的な感覚で、暗いと感じていたことが上がるが、それはいわば人の感覚で、別に暗いだけで実害はないだろう?
おそらく大多数の人がそういうだろうけど、問題は、その本能にも似た感覚は、正しいという事だ。
自転車で走行すれば、道行く先に老婆が立っている。
左をふと見れば、何かがこちらを見ている。
あげくの果ては、真夏なのに妙な寒気とともに、前方に誰かが立っているなどなど、あげたらきりがないのだ。
さて、話を戻そう。
そんな街道のわきの教習所に通い始めて3週間後、私は無事仮免許を取得し、教官と一緒に行動に出る事になった。
教官は、今日は雨だから、気を付けてくれよ。
そう言ったのをよく覚えている、と言うよりも忘れようがない、なぜならば、この後の話に大きくかかわるからだ。
私は不慣れながらも、車を発進させ、しばらく運転を続けていると、街道へ入るように教官に促され、指示に従い、街道へと入りました。
街道は本日曇りの、雨が降っているという事もあり、とても薄暗く、ライトをつけるように促され、私はライトを付けました。
しばらく走行し、ふとあるバス停の前を横切りました。
すると教官が、少し笑いつつこう言いました。
「さっきの女性、なんでこんなに雨降ってるのに傘さしてないんだろうなぁ」
「へ?!女性?」
「え、いただろさっきバス停に?」
確かに先ほどバス停の前を横切ったのは自分の視界にもとらえており、そのバス停の目の前には横断歩道もあったため、人が居ないかは確認していたが、人なんてどこにもいなかったのだ。
「教官、どうしたんですか。疲れてるんですか?人っ子一人いませんでした」
私がそういうと、教官はボソッと。
「ああ、うん、そうか。嫌々悪い悪い、最近夜遅くまで仕事してるからなぁ」
などと言い、その日はその後何事もなく教習を終え、帰路につきました。
数日後、いつものように坑道にでて、いつものルートで街道に入り、そのまま教習所に変えるルートに乗ったとき、ふと先日の教官が、女の人を見た、と言ったバス停が見えてきました。
本日はお日柄も良く、夏も近い事から、暑くもある今日この頃だったのですが、なぜかバス停に近づくにつれて、妙な気配と、寒気が全身を駆け巡り、うわぁ、通りたくえぇなぁ、などと心でつぶやいていると、バス停が視界に入り、その目の前に横断歩道が見えました。
教習所で、横断する歩行者がいる場合は止まるように、そういわれていたので、私はとっさに右側に人がる事に気がつき、減速し始めました。
すると、本日の教官が怪訝そうな声で。
「なんだい。なんで減速してるんだい?」
「え、右側の横断歩道に人が・・・・」
そう言って止まろうとしたが、そこには人など居らずだったので、普通に減速してた車のペダルを踏み、スピードを上げようとして、左側バス停に、何か黒いものがふと見えた。
「・・・・なぁ・・・いやいいや」
教官が何か言いたげだったけど、私は左の視界の端にとらえたものが、妙に関わってはいけない何かだったような気がして、そのまま黙って運転し続け、教習所に戻ってきた。
それからさらに数日、最後の運転の日、最初に、女の人を見たという教官と一緒になり、いつもどうりに運転をし、他愛もない話をしつつ、いつも通りの道を回っていた。
最後に街道に入り、いつもどうり変える道、ふと教官が。
「あ・・・」
と声を上げたのでふと見ると、左側のバス停に女性が立っている。
黒い長い髪、7月にもなろうというのに、暑そうな着物に身を包み、そっとバス停の横に立っていた。
「い、いる」
私のその一言で車内は異様な空気になり、教官が一言。
「見ないほうが良い。あれは、ダメだ」
その一言で、私は左の視界に映るものが、かかわってはならないものだというのを理解し、その真ん前を通り過ぎよとした時だ、何か口をパクパクしてるのを視界にとらえた。
「そういや、こないだも見たんだって?」
いきなりそう聞かれ、いったい何のことなのか理解できなかったのですが、どうやら先日の、横断歩道で減速した件だとすぐに理解でき。
「ええ、さっきのアレじゃないですけど」
すでに目の前を通り過ぎ、だいぶ進んだこともあり、緊張が解け、そういうと。
「さっきのはやばい。こないだ見たのより酷い」
「こないだ見たのアレじゃないんですか?」
「あんなのかわいいぐらい今日のはやばい・・・・帰り、気を付けて帰れよ」
教官はそれだけ言うと、そそくさと荷物をまとめ、忘れろと言わんばかりにその日の教習は終わった。
どうやら教官が最初に見たのと、私が見だしたものは全く別だったらしく、商況も今日のほうが悪いのだと肌で感じ取れた。
その後、あのバス停の前どころか、私はこの街道に近寄るのを極力避けるようになった。
教習中、ほかにも様々な事があったが、それはまた別の話。
今は無事に教習を終えられたことを深く感謝しつつ、安全運転で行きたいものだと心底思った。
というのも、後から知った話なのだが、バス停の真向かいが古い病院だったのだ。
なぜバス停は気がついて、病院は気がつかなかったのかと言えば、街道に生えている左右の木々が、その先にある病院を隠すほど大きく立ち並んでいるからだった。
なぜ教習中に度々見えたのかとか、そういうのは考えたくないが、その病院は県内でも交通事故で運ばれてくる患者さんが多いのだと、病院があると聞いた時に同時に知った。
因果関係は分からないが、一つだけわかる事は、事故を起こせば確実にあのバス停の前に連れていかれる、という事だけは良く分かったのだった。
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